第155話  60階層へ

 その日は寝不足であった。

 でもうとうといていると至福の温もりに包まれていた。

 ユリシーズが俺を抱きまくらにして、その豊かな胸に抱き寄せていたからだ。

 息苦しくて藻掻こうとするが、ガッチリホールドされている。既に俺が無理矢理振り解かないと脱出出来ない筋力が着いていて、同じ年頃の女性程度の筋力がほぼあるっぽい。

 彼女の温もりと、胸の感触が心地良いのでいつの間にか少し寝れたようだ。

 そして起き抜けにおはようのキスをされた。俺は有頂天になっていたが、翌々考えると男女のそれと違い、物凄く軽いフレンチキスと言うやつだ。ディープキスに移行しようとして寸前でなんとか止められた。単なる朝のキスだが、俺は例え挨拶のキスでも俺以外とするのを嫌だと伝えると、彼女は俺以外とはしないと約束してくれた。


 俺は自分でも意外な程独占欲がかなり強かった。


 彼女は頭が良かった。教えた事は一回で覚え、四則演算も既に出来ていた。

 昨夜は姫会議へ早々に拉致られてブーブー言っていた。俺と過ごしたかったらしい。それでも日常の常識や、日本の事を教えられていて、とても嬉しそうだった。その後嫁会議と女子の教育に付き合わさせられていたようだ。


 とにかく皆に大事にされていて、まさにアイドルだ。

 今はまだ。色々な事で見なかった事にするような事が多い。

 例えば着替えだ。

 俺の目の前で裸になり、着替えを手伝う事になった。昨夜のお風呂上がりに皆に着替えさせられて、服を一人では着れないという。

 それはそれは美しい体なので、色々大変だった。彼女は俺が性的に反応しているのに気が付いて恥ずかしそうにしてはいるが、俺が押し倒さないので満足していた。それか試していたのか。ただ、真面目に少し脚を揉んだり、腕を揉んだりして筋力量を確かめていて、普通に行動する分には支障がないのを確認できた。


 彼女には清楚な服を敢えて着させている。聖女として周りに認識させる為だ。

 彼女の役割を考えた。意味もなく受肉し、変異の直前に顕現する訳がない!

 恐らく変異を鎮めるのに大事な役割を持たされているのであろうと。

 以前の伝記を調べたいが、時間がなく断念していた。

 彼女が蝕は変異の始まりと言っていたからだ。そう、もう何処かで始まっているのだろうと。


 そして彼女に送り出されれダンジョンに赴く筈だったが、俺が護衛と一緒なら外出を許可したので、ダンジョンの入り口まで着いてきていた。

 お昼もダンジョンに来ていて、俺達への昼食の配膳などを手伝っていた。


 そして既に騎士団を始め、その優しい対応から聖女として認識されつつあった。この数日の間にいつの間にか、ダンジョンと屋敷の送り迎えに、兵士の一団が付き従うようになっていたりした。勿論国王としての命令も有ったのであろうが、かなりの倍率で護衛の募集に兵が殺到したとかしなかったとか。


 そんな感じで4日後には60階層に到着し、昼食の後ボス部屋に挑むのだが、ユリシーズから見事な鞘を渡された。やはり世界樹から作り出されたのだが、見事な女神がと言うより、ユリシーズの姿をモチーフにした女神像が彫り込まれており、俺は渡された時に余りの嬉しさに、ユリシーズの脇をに手を挟み抱き上げてくるくると回って喜んでいた。彼女は恥ずかしそうではあるが、俺の喜びように満足していた。

 何と彼女が自ら彫ったそうだ。恐らくそれにより色々な加護が加わったと思われる。


 そして周りから見えない所に連れられて


 ユリシーズ「聡太様、ご武運を。ちゃんと帰ってきてくださいね!それとこれは、ちゃんと帰って来る為の文字通りおまじないです」


 そう言うと俺の頬を軽く挟み込み、ちゃんとしたキスをして来た。長い時間と言っても1分位だろうか、ディープなキスをしていた。体中が喜びに満ち溢れ、体が軽くキレがあり、感覚が鋭利だ。今は何と戦っても負ける気がせず、彼女を少し抱きしめて皆の所に戻り、60階層へ向かうのであった。

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