第149話 皆既日蝕
お茶を啜りながら話を聞く事にした。俺は優しく聞いた
聡太「ねえユリシーズ、急に綺麗な女性になったね。昨日は子供だったのに」
ユリシーズ「そう、そうなんです。その、聡太様の魔力があまりに多くて急激に大人になってしまいました。」
聡太「うん。確かにびっくりだけど、大変ってどうしたの?」
ユリシーズ「あっ!そうでした。明日の夕方前に蝕が訪れるのです。」
そう言って狼狽えていたが、急に俺は目覚め、ユリシーズとの会合が解かれた。
何と先日壁に掛けた絵が落ちて俺の頭を直撃したからだ。痛みでのたうち回り、何とかヒールで治療し痛みが引いた。その後はユリシーズは現れず、翌日大木になった世界樹ことユリシーズに皆で挨拶し、ダンジョンに繰り出した。嫌な予感がするのでペースを上げてその日の攻略階層である52階層を終えて、屋敷に戻る。着替えている最中に異変に気が付き、皆で外に出ると辺りが急激に暗くなってきた。
俺は思い出した。ユリシーズが蝕がどうのと言っていたのを。日食の事だったっぽい。
それはともかく金環でも部分でもなく、皆既日食だった。
神秘的な美しさに魂が震えた。そして涙した。初めて見る皆既日食に驚きと感動を覚え、ネットで皆既日食に取り憑かれた者の記事を見た時はバカにしたものだが、それが誤りだと理解してしまった。
プロミネンスだろうか?時折太陽があるであろう所から筋が見える。神秘的だ。
俺ははっとなり、世界樹へ駆け寄る。幹に触れると脈動しており、何かが起こると半ば確信した。
周りには俺の妻達とその予定者のみ集まっていた。何かに引き寄せられるようにして。
そして世界樹が咆哮を上げた気がする。
世界樹が震えていて俺が抱きつこうとしたその時、世界樹から何かが出てきた。咄嗟に受け止めるとそれは何か膜のようなものに包まれていて、神聖な何かと理解した。柔らかく暖かく、何より清らかだった。
俺は必死にその膜を破り、中にある物を確認し、取り出そうとした。
そうすると何か管のようなものが取れて脇に放り出す。するとゴホゴホという咳が聞こえたがそれきりだ。
はっきりとは見えないが、そこには紛れもなく裸の女性の体があった。子供の体ではない。温かいがピクピク震えて入る。但し、息をしていないが。
俺は慌てて俺の膝の上にうつ伏せで置いて、背中を数回平手で叩いた。そうするとゴボっと口から液体を吐き出し、むせ出した。そして呼吸を始める。俺は慌ててクリーンを掛け、仰向けにする。
そうするとその女性が話し始めた。声がかすれていて誰の声かはすぐにはわからなかった。
女性「ぞ、ぞうじゃじゃま。ごほごほ」
俺はグラスを取り出し、水を飲ませようとしたが彼女は飲めなかった。
俺は必死に口移しで飲ませるとようやくまともに言葉を発せれた。
女性「そ、聡太様の本物のお顔ですわ。一体私に何が起こったのでしょうか?」
俺は声の主がわかった。ユリシーズだ。まずは裸は良くないのでバスタオルを出し体を覆う。そして
聡太「ユリシーズだね?空をご覧!皆既日食だよ。神秘的なんだよ。君は皆既日食の影響で受肉したのかい!?」
俺の所感を伝えて、動揺しているユリシーズを抱きしめ背中を擦るのであった。
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