第19話 葬儀

 葬儀は柩の前で行われる。

 教会?神官?聖職者が生前の彼女の功績を讃えていた。彼女はこの村唯一の魔術師として尊敬をされていた。

 俺の事はリリア宛の遺言に新たな弟子としようとしていて少し手解きをした段階だったという事にするよう伝えている。ちょっと話の筋が合わないがスルーした。


 別れは柩に花を入れてあげ、フタをして男衆で墓穴に入れる。柩にロープを掛け、ゆっくりと穴に置いていく。そうしてシャベルで土を掛け始めたので


 聡太「良かったら私の魔法で土を掛けてあげたいのですが!」


 そう言うと村長らしき人が頷いてくれた。

 俺は穴を掘って盛られた土にアースホールを使い、砕いた状態をイメージして柩の上の優しく振りかける。


 村人は大いに驚いていた。

 2,3分で大まかに掛け終わったので、後は皆で盛り土をして終わった。

 どうやら優秀な魔法使いと思ったらしく、色々聞いてくるが、生活魔法とホール位しかまともに使えず、その他は修行を始めたばかりで威力が弱いとヒョロヒョロなファイヤーボールとか、火消しにしか使えなさそうなウォーターボールとかを見せたが驚かれた。弱いとはいえ3属性を使ったからだ。


 リリアが墓標がないと泣いていたので、近くに岩場が無いかと聞くと30分程山に入るとあると言うので、鎧などを着て向かっていく。リリアは不思議そうにするも黙って案内してくれる。


 途中獣型の魔物が出るがリリアが鮮やかに切り裂いていた。細身のレイピアだが、これだけは親から譲り受けた?業物らしく宝石こそ外してあるが鍔の部分に華麗な装飾が施されていた。立体構造で鍔が篭手の代わりをする。


 岩場に着くと俺は墓標の形を思い浮かべ、アースホールを唱えると手元に見事な墓標にする石が出てきた。岩でも行けたのだ。

 即収納に入れ戻る事にした。

 帰宅するとリリアが昼食を作ってくれる。


 俺は墓作りをしに行く。盛り土に墓標が収まる穴を開けて、地面に墓標を出しアースホールの応用で幸恵さんの名前を刻み、異世界からの召喚者だった旨を記載し墓に建てた。


 リリアが呼びに来たので、完成した墓標を見せると、喜んで泣いて抱きついてきた。俺は尻もちを着いたが、そっと涙を拭い昼食を食べた。

 リリアは幸恵さんの荷物の整理をするというので、出発は数日後になりそうだった。

 昼食後お茶をしていると村長ともう一人中年の男が訪ねてきた


 村長「聡太殿とおっしゃいましたかな。実はお願いがございまして、村からの依頼をお願いしたいのです。勿論謝礼はしますしどうかお願いします」


 もう一人の男が説明を始めた。

 二週間位前に大雨があり、土砂崩れで農作業用の貯水池が埋まってしまったという。それを掘り返すか新しい池を掘って欲しいというのだ。俺の魔法なら行けると感じたようだ。

 リリアに聞くと行ってらっしゃいと手を振られ、じゃあ今からら行きますかとなり驚かれていたが、農作業に影響が出ると危惧していたそうで早いにこした事は無いと三人で向かっていった。村長は数日かかかると思っていたようだ。


 初めて村の中を歩いたが何故か合掌造りの家があり、村長の家を始め複数あった。


 聡太「あの、村長さん、合掌造りの家ってこの国では多いのですか?」


 村長「ほう、幸恵さんの弟子になる方だ。よくご存知ですな。これは幸恵さんから教えられた我が村だけの特徴ですよ。順次建て替えをしておるのですが幸恵さんの所は間に合いませんでしたというより、断られたのですがね」


 ふむふむと頷き、後で見せて貰う事としたが、外観でいうとテレビとかでよく見る白川村にあるようなのとそっくりだった。


 暫く進むと土砂崩れで塞がれた道が見えて来て、大体の方向を指されこの辺りに池があったと説明されたが痕跡がなかった。

 掘り返した土はどういうふうにしてもよいというし、周辺は誰も住んでいない。俺は周囲に土砂を細かくして撒き散らすことにした。

 場書を概ね決めて、深さは30m,直径300m位を思い浮かべた。それ位の大きさだったと言われたからだ。取水口の辺りを確認し、そこを壊さないように発動した。

 そうすると見事な穴が空き、周辺に土砂が撒き散らされたのが分かる。

 取水口の辺りを整地していき、そこを見つけたのでアースホールを駆使して取水口を何とか使えるようにした。調整池には川の支流からの水が流れていたようで、段々水位が上がってきている。


 俺があっさりとしかも一回で完了したものだから大いに驚かれた。

 数日以内に満水になると感じで問題が解決したと喜ばれ、その後村長宅に行き家の中を見せて貰ったが、純和風な作りで記憶にある合掌造りのそれだった。ただ、村の方々は日本人のそれとは大きく違い、髪の色も金、銀、紫、緑赤と色々あり顔つきもフランス人やロシアの者を彷彿とさせる方を見掛けた。そして報酬を貰ったが、後で確認したら金貨20枚だった。それが多いのか少ないのか分からないが、金額を改めず懐にしまったものだから驚かれた。


 村長「確認されなくてよいのでしょうか?」


 聡太「必要ありますか?村長さんは人を騙したり陥れるよう方じゃないでしょうし、金額は分かりませんが例え少ない金額だったとしても、この村で出せる精一杯な金額か、相場の金額でしょう」


 村長「恐れ入ります。やはり幸恵さんの見込んだ方は力も度量も洞察力も違いますな。それはさておき、今後リリアをどうされるのですか?」


 聡太「本人の希望と、幸恵さんの遺言に従い隣町に行き、まずは冒険者として力と経験を積みます。幸恵さんの手紙によりますと、どうやら私は現在発生しているという変異とやらに対処する事になり、彼女の助力が不可欠と聞かされました」


 村長「もしや貴方様は勇者ですか?」


 聡太「村長さん、口外なされぬようお願いしますが、私は記憶を失った状態で川を流されており、リリアに助けられました。幸恵さんは予知能力があったようで、私が流れ着く時と場所にリリアを差し向けたようです。そして私も自分で認識していますが、幸恵さんと同様に異世界人です」


 村長さんが驚いていたが頷いてくれた。

 幸恵さんの身辺整理をし、数日以内に出発する旨を伝えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る