第1章 穴掘り師

第15話 目覚め

 誰かが俺の額に手拭いを当ててくれている。ひんやりとして気持ちいい。しかし体中が痛い。取り合えずヒールを掛ける。痛みが引いて行く。


 目が覚める。意識が完全に戻ったのだ。目の前にいるのは知らない女だ。歳は16−18歳位の儚げな感じの金髪でポニーテールの美少女だ。しかし見覚えがないのだが、違和感がある。そう、耳が尖っているのだ。小説とかで出てくるエルフというのだろうか?

 よく見るとすらっとしているが胸はCカップかな?金髪で細長の顔だ。服は袖のない質素な動きやすそうな服だ。ついつい胸に目が行ってしまうが、エルフってチッパイが定番かと思っていたけど、違うようだ。でもエルフだよエルフ!凄いよな!等とアホな感じだったがふと自分の名前が思い出せない事に気が付き


 聡太「あの、ここはどこで私は何故ここで寝ているのでしょうか?」


 女「良かった。目覚められましたのね。貴方は川を流されてきて、偶然私が発見して、じゃなくて、お師匠様に言われて見に行ったら貴方が倒れていたのです。そして村の人達に手伝って貰って運んでもらったのですよ。冒険者様?いや、騎士様ですか?」


 聡太「あ、あの助けて頂いて有難う御座います。その、自分が何者か、名前も出てこないのです。どうして私を騎士だと?」


 女「そうですね、貴方の装備が上等な物だからです。革鎧では有りますが、魔法による追加防御が施されているのと、武器も騎士団がよく使っている物です。やはり追加効果が付与されております。それとその丁寧な態度ですよ。冒険者のそれとは違いますし、何より鍛えられた体をしておいでですから」


 聡太「そうですか、あの、お名前をお伺いしても宜しいでしうか?」


 女「これは失礼しました私は、リリアと申します。宜しくね!騎士様」


 そう言い椅子から立つと優雅にスカートをちょこんとつまみお辞儀をする。


 俺も立ち上がり礼をしようとしたら静止されたが間に合わず、御開帳だったので慌てて布団に戻った。


 聡太「えええええ!何で裸なの?」


 リリア「あ、あの取り合えず私部屋の外に出ていますから服を着ましたら声を掛けてください」


 俺は洗濯され、綺麗に畳まれた服を着た。鎧の下に着る冒険者の服だ。


 聡太「リリアさん、着替えましたよ。先程は見苦しい物を見せてしまいました」


 リリアさんが入って来た。


 リリア「その、鍛えられて無駄な肉の無い凄い体ですね」


 聡太「うーん。名前も分からないから何の為に鍛えていたか分からないのですよ」


 リリア「そうでしたわね!それでしたらステータスカードを見れば良いじゃないですか?」


 聡太「どうやってやるのですか?」


 リリアが実際にやって見せて白いカードを渡してきたがそれには


 名前  リリア

 年齢  17歳

 職業  見習い魔法剣士

 レベル 12

 所属ギルド クラーク


 俺も同じようにすると金色に縁取りされたカードが出て


 名前  穴吹 聡太

 年齢  18歳

 職業  穴掘り師

 レベル 28

 所属ギルド クラーク

 称号  異世界人


 とあり、カードをリリアに渡した。

 すると俺の手を握り


 リリア「私、異世界の方って初めて見ました!それにこの年でレベル28って貴方は、何者ですか?」


 聡太「どういう事?」


 リリア「私のレベルってこの歳ではかなり高い方なんですよ。私の倍以上って余程の強者かなと思うんですよ」


 聡太「すまないけど、記憶がないんだ。記憶がない理由が分からないんだ」


 リリア「あっ!いけない。聡太さんが起きたらお師匠様の所に連れて来るように言われれるんだったわ。あの、お師匠様はおそらく今日でお命が尽きます。お師匠様がおっしゃっていました」


 そういうリリアの顔は暗かった。


 そしてリリアに案内されて師匠の部屋に入る。


 年老いた女性だった。白髪混じりの80前後でかなり高齢だが、日本人?ぽい外観だ。


 師匠「目覚めたのですね。ありがとうリリア。少しこの方と二人にしておくれ」


 リリアは頷き大人しく部屋を出ていった。


 師匠「お初にお目にかかります。真の勇者よ。私の予知ではそなたが最強勇者の筈であります。ああ懐かしや。生きて再び日本人に会えるとは」


 聡太「貴女は日本人なのですか?」


 師匠「ええそうですよ。茨城県出身ですのよ。貴方様は?」


 聡太「すいません。記憶を無くしていまして、ステータスカードから聡太という名前しかわかりませんでした」


 師匠「私は、幸恵と申します。この世界に送られ早60年。予知では今日寿命を迎えます。見ての通り老衰です。私はこの世界に送られたのは201x年でしてね。これをお持ちください。私の日記です」


 そう言うと何処からともなく日記を出して渡してきた。促されるままページをめくると確かに日本語で書き記るされていた。他にも日本語で書かれた本を出してきた。


 聡太「確かに日本語ですね。何処から出してきたのですか?」


 幸恵「聡太殿も収納を持っておいででしょう?何かを持って収納と念じなされ」


 そうして試すと入り、出したいと思うと出てきた。


 収納の使い方を何故か思い出し、スマホと生徒手帳を出して見せる。久し振りに日本の物に触れられて泣いていた。


 突然苦しみだし、ゼイゼイと息をする

 幸恵「ありがとう聡太殿。あの子を連れて世界を回ってください。私の所為であの子はこの村から離れられませんでした。剣と精霊魔法を学んでおります。きっと勇者様のお役に立てると思います。それともしよかったらあの子を娶ってあげてください。聡太殿は大器晩生と予知で伝えられております。しばらくは不遇で辛い思いをされるでしょう。もう時間がないので後で私の日記を見て下され。残念ですが時間です。伝えたい事は多くありますが、そろそろお迎えが来ました。あの子をお願いします。身寄りのないあの子を引き取り育てた我が子のような存在であ、の子のお陰で幸せでした。うう。あの子を呼んでください」


 俺はリリアを呼んだ。少し話していたようだがリリアが俺を呼び、片手を握るよう言われ握ってあげる。リリアももう一方の手を握り笑顔を向けている。幸恵さんは穏やかな笑顔を見せ、やがて息を引き取ったのであった。幸恵さんは何故かリリアを俺に託したがっていた。そして息を引き取る形で託されるのであった。

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