日本の大魔王、異世界の神に転職する。

井石 諦目

転生編

第1話 魔王転生

 いくつもの時代を経た。つい最近昭和になったと思ったら今度は令和だ。ここ最近は災害こそあれど戦禍がない。退屈な時代になったものだ。


 日本の魔王は退屈を嫌う。いくら書物や巻物、ツイッターがあるとはいえ今の時代はいささか生ぬるく退屈だ。とはいえ魔王には自ら厄災を起こす気も今はない。

日差しに刺されながらも、魔王は本日何度目かもわからない昼寝をしよう寝ころんだ。


 …何か来ているな。

 距離にして90㎞強先。しかも気配からしてこの世ならざるものだ。断りもなく人のうちに土足で踏み入るとは。暇つぶしにはいいが、気に入らん。


 魔王は社の前の石段をゆっくりと下り始めた。客人に出迎え一つないのも野暮というものだ。魔王が下りきるより先、途中の踊り場。そこには一人の女性が立っていた。どうやらこの世ならざる客人は彼女のようだ。

背丈は150㎝程だろう。腰まである金色の髪にはウェーブがかり、碧の瞳はヒスイをそのまま埋めたように輝いている。古代ローマのドレスに似た衣服を纏い、その豊かな体をより美しく飾っていた。


「貴公、何用だ。無断で人の敷居に立ち入ったのだ。つまらぬことを言う様なら容赦はできん。疾く失せるなら不問としよう」

 常人には、いや神であろうともその殺気に耐えられまい。だが女は穏やかな表情で丁寧に頭を下げると言った。

「ご無礼をお許しください。何分こちらのルールに疎い故。あなた様に敵意はございません」

「まずは名乗れ。それからだ」

「申し遅れました。わたくし、転生の女神■■と申します。」

 女は頭を下げ、名乗りを終えるとつづけた。


「異世界で神になりませんか?」

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