俺の彼女が120円だった件~After days~
守田野圭二
一時間後(水) 櫻と桜のサクサクコントだった件
※あらすじにも書いてありますが、本作は『俺の彼女が120円だった件』の後日譚です。大きなネタバレがあり物語が台無しになってしまうため、必ず先に本編をお読みください。
(本編へのリンクはあらすじに記載してあります)
女は恋をすると綺麗になる。
その信憑性は定かではないものの、実際にそう感じた女性は八割を超えるらしい。
一説によるとホルモンの関係らしいが、それなら男は一体どうなるのか。
「ふ~ふん♪ ふんふんふふ~ふ~ふん♪ たっだいま~っ!」
卒業式から意気揚々と帰還した俺こと
軽やかなステップを踏みながらリビングへ向かうと、そこには三時のおやつであるチョコレートをハムスターの如く口いっぱいに頬張っている妹の
「ほはえり、ホニ~ハン」
「(ニコ~)」
「ごっくん。はえ? どったの?」
「良ぉお~~~~~しッ! よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし――――」
「あぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」
梅を抱きしめるようにして、ショートカットの頭を全力で撫でまくる。
いきなりの奇行に驚いた妹は、悲鳴を上げつつ必死に俺を振り払った。
「ふしゃーっ! ふーっ! ふーっ!」
一向に笑顔を崩す様子のない兄が不気味なのか、そのまま全力の警戒態勢モードに。猫のように威嚇する声を上げながら、洗いかごに乗っていたお鍋の蓋を手に取り構える。
その騒ぎを聞きつけてか、階段を下りてくる音がすると背後から声を掛けられた。
「ふぁああああ…………何だか楽しそうな声が聞こえてきたけど~?」
「
真っ昼間から昼寝をしていたのか、だらしない恰好で現れた姉貴に梅が助けを求める。ついにって、まるで今までに壊れる兆候があったみたいな言い草だ。
それでもご機嫌MAXな今日の俺は、そんなこと気にも留めない。ニッコニコな笑顔が止まらない弟を見て、姉貴が頬に人差し指を当てつつ首を傾げる。
「随分と楽しそうだけど、櫻ってば何か良いことでもあったの?」
「ありもありの大ありだ!」
「う~ん……わかった! USBが一回で刺さったんでしょ?」
「ノンノン」
「じゃあストップウォッチで十秒ピッタリを一回で出せたとか~?」
「ちゃうちゃう」
「ゴミ箱にゴミを投げたら一回でゴール☆」
「違ぁうっ! さっきから何で地味に嬉しいことばっかりなんだよっ?」
「え~? それなら答えは~?」
その質問を待ってましたとばかりに、俺はごほんと咳払いをする。
そして自慢するようにドヤ顔で、胸を張りつつ答えた。
「彼女ができたっ!」
「「………………………………」」
スタスタ。
「お兄ちゃん、頭大丈夫? 薬飲んだ方がいいんじゃない?」
「何でだよっ?」
冷ややかな目を向けていた梅が、食器棚を開けると薬を差し出してくる。しかも頭の心配をした癖に、これ頭痛薬じゃなくて正露○じゃねーか。
「うんうん。気持ちはわかるわよ櫻。桃姉さんも昔はどうしてもお兄ちゃんが欲しくて、頭の中で薔薇兄さんを作り上げた経験が――――――」
「何の話だよっ?」
恐らく姉貴は悪ノリだろうが、梅はガチで信じてない様子。まあ出会い頭よしよしは流石にやり過ぎだった気もするし、本当であることはすぐに分かる話だ。
次に聞かれる質問はズバリ、相手が誰なのかだろう。
その名前を耳にすれば、流石の二人もさっきみたいな反応はできまい。
「そっかそっか~。それじゃあ今の気持ちをコントでどうぞ!」
「聞いて驚け! 実は…………え?」
「櫻のコントまで~3、2、1、キュ~っ!」
「さ…………櫻と! 桜の! サクサクコント~」
「「うわぁ…………」」
「いや普段お前らがやってることだからなっ?」
「ゴメンゴメン。まさか一人二役でやりだすとは思わなくて。ねえ? 薔薇兄さん」
「まだ頭の中にいたのかよっ!」
咄嗟に桜咲くに掛けて上手いことを言ったつもりが、もう一人のボク的な意味と勘違いされていたらしい。梅の視線もゴミを見るような目に変わった気がする。
浮かれ気分も落ち着いて普段通りに戻った俺は、改めて二人に事情を伝えた。恋人ができたことと、明後日にはその彼女と共にショッピングへ行く約束をしていることを。
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