第2話 配信後の感想会
「こんな感じで良かったかな、咲季ちゃん?」
「もうバッチリ! 100点満点の大盛り上がりだった、ッスよ! やっぱり、そのキャラクターに
配信停止ボタンを押してから、カメラの向こう側に立っている友人に問いかける。彼女は親指を立てるジェスチャーと、満面の笑みを浮かべていた。それから、何度も繰り返し頷いていた。
カメラの向こう側から指示を出してくれていたのは、
そして私の名前は、
「視聴者の数も凄かったッスよ」
「えぇと。一番多い時で、1300人ぐらいは居たかな? これって多い方なの?」
「めちゃくちゃ多いっす! 個人では、過去最高だと思うッス。企業勢にも負けないぐらいッスよ! めちゃくちゃスゲー、ッス!」
かなり興奮している彼女。それほどの結果だったのだろう。彼女が喜んでくれて、私も嬉しい。
「あ! 真央ちゃん、飲み物をどうぞ。ずっと喋り続けてたんで、喉のケアをちゃんとしないとイケないッスよ。のど飴もあるッス。あ、加湿器つけますね」
「ありがとう、咲季ちゃん」
「大丈夫ッス。真央ちゃんは、おとなしく休憩しててください」
一時間ほど話し続けたぐらいでダメージを受けるほど、私の身体はヤワではない。だけど咲季からスポーツドリンクを受け取り、彼女に言われた通り私は喉を潤した。甲斐甲斐しく世話をしてくれる彼女の指示通り、私はおとなしく休憩する。
「真央ちゃん、これを見てくださいッス」
「ん?」
しばらく休憩した後、咲季と一緒に配信のアーカイブというものをチェックする。先程、配信した内容を後からでも見れるようにと保存されている動画らしい。
それで、配信中に見きれなかったコメントも途中で動画を停止しながら見ることが出来るそうだ。結構、見落としてしまったからな。
2人で一緒に、1つずつ視聴者からのコメントを確認していく。
「へぇ。いっぱいコメント書かれてるね」
「これからの活動を応援してくれるコメントが、かなり多いッス。声や動きが可愛いって褒めてくれるコメントも大量ッスよ。流石、真央ちゃん!」
「キャラクターのデザインが可愛いって褒めてくれてる人も多いよ。キャラクターの動きも滑らかだって。モーションキャプチャの設定が上手に出来てた、ってことだよね。事前に準備をしてくれた、咲季ちゃんの技術もちゃんと評価されてる」
「あ、う。そ、そうッスね」
褒めコメントを見つけて、私のことをどんどん褒めてくれる咲季。褒め返してみると、彼女は恥ずかしそうにうつむき、顔を真っ赤に染めていた。とても嬉しそうだ。
「私だけの力じゃ出来なかった。咲季ちゃんが居てくれて、本当に良かったよ」
「あ、え。ッエヘヘヘッ。その、わ、私は好きでやってるだけだから。こんな趣味に付き合ってくれる友達が出来るなんて、夢にも思わなくて」
「うん。一緒にできて良かったよ。これからも頑張ろう」
「あ、ぅん。その、えっと……。ありがとう、真央ちゃん! ッス!」
バーチャルキャラクターとか、配信とかを数ヶ月前まで知らなかった私。それが、彼女に誘われ興味を持った。実際にやってみると、とても楽しむことが出来た。
今まで誰にも話したことのない前世についての話を包み隠さず、自由に話すことが出来るというのが良かった。
これまで誰にも話してこなかったのは、こんな事を話すと頭がオカシイと思われるだけだろうし。本当だと信じられても、人間界に余計な混乱を生み出すだけだろう。だから今まで、転生や前世について誰にも話したことはなかった。
ただ、いつか誰かに聞いてもらえたらなと思っていた。そんな時に出会ったのが、咲季である。
私の前世について話す時、それを信じてもらう必要はなかった。話を聞いて精神の病気を疑ったり、悲しそうな目で見たりせずに、フラットな感情で私の言葉を聞いてほしかった。
「実は私、前世は魔王だったんだ」
「へぇ、凄いッス!」
咲季はオタク的な思考によって、私の前世の話を許容して面白いと聞いてくれた。そして私の話を、バーチャルキャラクターの設定として活用してくれた。
配信を見てくれた視聴者は、バーチャルキャラクターの設定とはいえ、画面の中でリアルに存在しているものとして楽しんでくれた。
私の求めていた事が、バーチャルな世界と配信という場所で叶えることが出来た。
咲季に誘ってもらって、本当に良かったと思う。これから先も色々と楽しそうだ。前世の話、次は何から話してみようかな。考えるだけでも楽しい。
「次の配信、いつする?」
「今日の配信も大成功だった、ッスから。なるべく早くッスね。明日の同じ時間とかどうッスか?」
「いいね。そうしようか」
配信という新たな世界、私はもっと参加していきたいと思った。咲季も積極的で、次が楽しみだった。
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