噛み砕け

沈殿する鯛

4月3日(金)

今日から毎日1話ずつ、書いていこうと思う。

皆さん、お元気ですか。

文章の書き出しというのは、重要だ。

扉を開きたくなるか、否か、書き出しの言葉に何を選ぶのか、筆者の真骨頂が最も浮き彫りになるところであろう。...と、書き出しているだけでも嘆息が思わず漏れる。足りない。自分の窮屈な脳から取り出せるものが、もっとあってほしい。この世の資源は潤沢なのだ。偉人が遺していった、生命から搾り取られた、輝きの一片一片が。気の利いた一言でも、さっと尊びながら取り出せるような自分でありたい。


…と書いていたら、イヤフォンから思い入れのある音楽が流れてきた。

記憶がある。声。当時、言葉を交わしたことはたったの一言二言ほどだっただろう。

絹のような汚れのない祈るような声。当時から、印象的だった。その人の歌声は。

今よりももっとオペラの知識が浅薄であった私にとって、その人の声で歌い上げられる曲で知った作品は多く、いま聴こえているその曲も然りだ。



いまはどうしているだろうか。

その人が出勤するときは、いつもより強く、祈る。どうか、今日も一日、健康な状態で帰ってこれますように。そして、明日も、明後日も、健やかに日々を送れますように。祈りながら送り出すたびに、未だに涙を堪える。慣れない習慣だ。前を向く。心を強く持って、姿勢を正し、まっすぐ前を見据える。心で、負けない。屈してたまるか、と思う。

誰もが、いつ何時感染するかわからず、怯えている。私にとってのその人であるように、誰かにとっても、身の安全を祈る相手がいて、でも何をすることもできない。会いに行くことも堪えて、ただただ、祈り続ける。


憤りを感じざるを得ない。

こういう時に思い浮かべるのは、もちろん自身の健康ももちろんだが、愛する人たちのことであろう。

想像力が足りない。政治家は何をしているんだ。

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