〖真実の愛〗エピソード④~心奪われたY子編~
YUTAKA
第一章 嬉しさと戸惑い
「TETSUOさんは何処に住んでいますか?」
居酒屋の小部屋で隣に座った女性から、私は終始質問攻めに合っていた。
その日の夜は先輩から連絡があり
「今から合コンなんだけど参加できる?」と、誘われた。
その土曜日は予定が空いていたし、以前からお世話になっている先輩のお誘いを断っていたので、私はその合コンへ参加することになった。
「今、彼女さんとか居ますか?」
週末の居酒屋は繁盛していて6人用の席に、後から増員となったこともあり10人が座っていた。
そして私は入口から一番奥の隣に座り、隣の女性とは密着するような状態になっていた。
合コンに誘ってくれた先輩はお目当ての彼女がいて、場の盛り上げ役のような状態で呼ばれたことは周知していた。
しかし、私は団体行動が苦手だし特に周りが騒々しい場所も好きではなかったのだ。
「週末は何をして過ごしてますか?」
隣の席に居た女性との会話はほとんど私への質問だったと記憶している。
そして、その場の時間が経過することは、なぜか長く感じていた。
私はトイレに行くと合コン主催者の先輩が居て、先輩は私にこう言った。
「どうだTETSUO?俺の彼女がこの会で一番キャワイイだろ?(笑)」
その時のことはよく覚えていて、人の美的感覚には個人差があるものだと先輩の彼女を見て実感した。
そうやって十人十色の感覚が違うから、世の中は上手く出来ていいるのだと心の中で思った。
「おい!お前も今夜は楽しめよ!!!」
そう先輩には言われたが、内心は早く帰りたくて仕方なかったのだ。
やっと合コンが終わり二次会へ行く人と、帰宅する人へと別れることになった。
私は車で来ていたので飲酒はしておらず、同じ方向へ帰宅する男性一人と女性二人を家まで送ってあげることになった。
そして車を取りに行こうと駐車場へ向かう道中で、背後から話しかける女性がいた。
「TETSUOさんって背が大きいですよね♪」
私の身長は173㎝だったが、隣で歩いてる先輩二人は180㎝以上で明らかに私より大きかったのに、何故かその女性は私に向かってそう話しかけて来た。
「初めてそんなこと言われたよ!ありがとう」
暗がりの道でその女性の顔が見えなかったが、取り合えずお礼を言った。
そして、その女性は帰宅組だったから、私の車に同乗して自宅まで送ってあげることになった。
名古屋方面から岐阜方面へ向けて車を走らせ、後輩の男性一人と名前も知らない女性一人を無事に自宅へ送ると、先ほど暗がりで会話をした「Y美ちゃん」と車中で二人きりになったのだ。
「よくこういう飲み会には参加するの?」
私はY美ちゃんへ質問をした。
「今日は仲の良い女友達に誘われて、久しぶりの再会を楽しみにしてたんだよね」
そう言えば合コンの席でY美ちゃんは、女性とばかり会話をしていた記憶があった。
「そうなんだ!お酒を飲むと会話も楽しいよね!」
私はずっと隣の女性に職務質問のような会話で疲れたのが本音だったが(汗)
「TETSUOさんは背が高くてスタイル良いですよね~」
何故か彼女は私の身長ばかりを褒めてくれるのだが、屈託のない性格の彼女とは会話が盛り上がった。
そして、Y美ちゃんの自宅近くで車を停車したが、二人の会話は終ることなく続いた。
「また会えないかな?」
自然と私の方から彼女を誘っていた。
「うん!私もまた会いたいと思っていたよ」
好感触の返事がY美ちゃんから返ってきたのだが、別れ際に彼女からはこう聞かれた。
「今は彼女とか居ますか?」
その質問に私は間を置いて短く答えた。
「うん!居るよ」
そう言って私は答えたのだが、彼女からの返事は何も無かった。
お互いの連絡先を交換して彼女を見送った後、私の心は「嬉しさと戸惑い」の複雑な思いに襲われたんだ。
そう
私には彼女と呼ぶ存在の人が居たからだ。
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