第6話
服の入った紙袋を持って、帰路へと着く。
流石に私が買わせたんだからと大量の紙袋を持ってはいるが、まぁそれなりに重い。
つかさはそんな私を見て何度も「持とうか?」と聞くが無視をする。これで軽々と持たれたら負けた気分になる。
だから私は意地になって持ち続けていた。
そんな帰り道に小さいがはっきりした声が響き渡った。
「つかさ様ー!そこの不良から離れてください!!」
声と同時に私とつかさの間を割るように一人の少女が割り込んで来た。
「わ、わわ!」
「あ、あかね!」
二人の仲を裂かれてしまい手を差し伸ばすつかさ。私は別にそんな仲ではないので差し伸ばされる手を無視して女の子を見た。
小柄で黒髪ロングの少女、小学生…いや中学生か?いやでも、それならつかさの名前は知らないはず…もしかして。
「高校生?」
「はぁー?どう見ても高校生ですが!?」
どうやら身長に対しては地雷のよう。
怒り狂う彼女だが、ふと我に帰ってつかさの方を向いてつかさの手を握る。
「つかさ様!この不良に何かされませんでしたか!?」
「何もしてないんだけど…」
てか私の方がつかさに何かされたんですけどね。
「お前には聞いてない!この不良が!」
がるるるる!と犬ように怒る彼女、犬種的にはチワワとかポメラニアン辺りの小型犬を連想させる。
てか、凄い敵視されているな…。
「私は見てたぞ!お前のような女がつかさ様の家から一緒に出て行く姿を!!」
「何かと思ってついてみれば…ショッピングデート……!くそう!ずるいぞ!!」
そして、私に人差し指を向けながら地団駄を踏む。
「どうやってそんな状況になるのか教えてください!…って違う!今すぐつかさ様から離れろ!!」
おい本音言っちゃってるじゃん。
ていうか。
「だれ?」
さっきから知らない人に怒られてて意味がわからなかった。
「な、私を知らないのか!?」
えぇ!?と一歩後退り驚く彼女。
実際知らんし…。
「私の名前は東城ルリ!そして、つかさ様ファングループの隊長だぁ!!」
うっわ…。
「うっわって顔するなぁ!」
予想はしていたけどファングループって…
やっぱつかさは美人なだけあってモテるんだなぁ…
「てかつかさ、お前のファンなんだからコイツどうにかしてよ」
「あ、ああ…うん、とりあえずルリ先輩大声出すのはやめましょう」
しーっと静かにするよう宥めるつかさ…え?こいつ先輩なの!?
「そうだぞ?…というかルリ先輩は結構な有名人なんだが、本当に知らないのか?」
「へ?そうなの?」
「ああ、この人は元生徒会長だからな」
「まじ?」
「まじだ」
どうやらこのちびっ子、いやルリ先輩はウチの学校の元生徒会長らしい。
その割にはなんていうか…。
「威厳もへったくれもないな」
「はぁーーーっ!?」
かっちーん!とまたまた怒り出すちびっ子先輩、げしげしとパンチを繰り出してくるが全く痛くなかった。
「よっわ」
「ムキー!!」
「と、とりあえず二人とも落ち着いて!」
その後、怒り狂うルリ先輩をつかさが宥めて大人しくなった。
「それで?どうしたんです?こんな所で」
「つかさ様がこの不良と付き合ってるんじゃないかと思って…尾けてました」
ごめんなさい…と謝るルリ先輩、ちゃんと謝るんだと感心してたのも束の間、すぐに私の方へと顔を向ける。
その眼は怒りに満ちていた。
「こんなヤツにNTRれるなんて!」
ぶっ!
「いや、いやいやいやいや!」
NTRじゃないって!
何言ってるんだこの先輩!!
「つかさ様もこんなやつと付き合わないで私と付き合ってよぉ!」
おねがいどら○もん〜みたいな感じでつかさの脚に寄り縋る。
アレで生徒会長とか世も末だろ…あと地味にふともも堪能すんな。
「いやです」
「フラれたー!」
ぎゃっ!と小さな悲鳴を上げてその場で倒れ込む。
「…………なんか、つかさも大変だな」
「うん…」
最終的にルリ先輩とやらは用事があったらしく何処かへと消えていった。
まるで何処からともなく現れる嵐のような先輩だった。
最後に私の方を見て「学校であったら生徒会パワーでお前をボコボコにしてやる!」と叫んでいた。ふざけんな。
「はぁーーー!疲れたぁ」
家に着いた途端、どっと疲れが押し寄せる。
つかさも疲れ果ててるご様子で、その場で座り込んでいた。そして独り言のように語り始める。
「前に生徒会のヘルプとしてルリ先輩の手伝いをしてたんだ…でも、あの人あんな調子だから……」
すごい疲れる…と珍しく文句を言っていた。
あそこまで言わせるとかあの人凄いんだなぁと私は心の隅でそう思った。
ただ、ルリ先輩と会って思い出したことがある。
「学校かぁ…」
長らく行ってなかったけど、行くべきなのかな?つかさなら答えを言ってくれるだろうか?そう思ってつかさを見た。
「ん?どうしたんだ?」
きょとんとした表情で私の瞳を見る、何も答えを言ってくれそうになさそうだと悟ると私はそっと目を逸らした。
「?…??」
意味もわからず首を傾げるつかさを無視して、また考える。
別に行く理由もないけれども、まぁ…うん。
「私…明日から学校行くよ」
と、逸らした目をもう一度つかさに向けて言い放った。
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