天才魔導士の妹を持つ平凡な兄は苦労する

冴えないkitoki

プロローグ

春休み。俺たちは新高校二年生は、学校へ集められた。

その理由は特待生の魔導士としての実力テストのようなものがあるからだ。これによって振り分けられるクラスも変わる訳だ。

ちなみにDクラスまであり、Aクラスが特進コースで、それ以外はあまり変わらん。

 今、未来ある新入生たちは魔法の練習場で魔法のテストをしていた。グラウンドに、白線で描かれた線の10m先にある人型の模型のようなものに、詠唱をし、魔法を放っている。

俺は魔導士の中でも極々平凡、または平均以下なので天才共を見てると虚しさが込み上げてくる。

だからといって、努力する気は全く無いけどな。俺が思うに努力をするのも才能だろう。

「爆ぜろ!」

結構、いや・・・かなりイケメンで金髪の男が模型の詠唱を始め、空気に魔法陣を書いている。通常、魔法はこうして使う。詠唱をし、魔力を体内に集め、魔法陣を指で書き魔力を実体化し、炎やら氷やらに変え放つ。

「爆炎!」

イケメン野郎が魔法を放つ。この魔法は高威力に属するもので、爆音と同時に起きた巨大な爆発によって、模型は跡形もなく砕け散った。

それと同時に周りから、黄色い歓声が沸く。当の本人は歓声など知らん顔し、汗を拭っている。なぜだか非常にムカつく。

イケメンだし、強いしさぞかし幸せなリア充生活を送れることでしょう。

まあ、どうでもいいけどな!

あれ、なんか涙が・・・

「いやー、驚いたな、月城の十倍くらい強いんじゃね?」

突然、俺の親友が肩を組んできた。

「いきなり失礼だな、成瀬」

俺を舐めてもらったら困るな。100倍近くアイツのほうが強いわ。

「だってお前の妹あんなに強い訳だろ。お前だって鍛えたらもっと強くなれるだろ~」

「やめてくれ、今妹の話をするのは。今から浴びる注目や質問のことを考えると憂鬱なんだ」

「え、お前の妹この学校入んの?」

「ほれ、今からテストだぞ」

列の中にいる俺の妹を指さす。黒髪ロングに凛とした顔立ち。兄弟でどうしてここまで、容姿やら魔導士としての実力やらが変わるもんかね。

自慢じゃないがメチャクチャ美人で垢抜けてるため嫌でも目に付く。

ちょうど今から魔法を放つところだったらしい。指差した事によってこっちに気付いたらしい。一瞬目が合ったがすぐに逸らし舌打ちをした。可愛くねえ~~

「お手並み拝見だな」

成瀬が呟く。何で上から目線?というか俺も見るの初めてかも・・・まあ、才能あるらしいし、あのイケメンよりちょっと弱いくらいだろう。

「行きます」

その声と同時に無詠唱で空中に魔法陣を書き始めた。

無詠唱だと?辺りがざわつく。というか俺もビビってる。

無詠唱は相当難しいはずだ。

詠唱をしないということは体内に魔力を集めず外の魔力を完璧にコントロールしなければならない訳だ。例えるなら絵を描く時、下書きせず初めからペンで描くようなもんだ。そりゃ当然クオリティも落ちるし、ミスも増える。

アイツ、イキって失敗しそうだな・・・。

俺の杞憂とは裏腹にアイツの実体化させた火の魔力は竜を形どり、模型に向かっていった。ドラゴンか・・・俺はせいぜい金魚しか作れねえわ。

紅が手を振りかざし、竜が模型に向かっていく。

当たった瞬間ミサイル並みの爆発音と同時に眩い光が溢れた。あまりの高威力だったため会場は煙に包まれる。煙が無くなってからようやく目を開けられた。

俺は初め自分の目があまりの衝撃でおかしくなったかと思った。おれは病弱だからな。

なぜならアイツの放った魔法は、地面にクレーターを作り、建物の窓はすべて割れていたからだ。やり過ぎだろ・・・アイツ。

紅は笑顔になり

「月城 紅です。ありがとうございました!」

その言葉の瞬間、クラスの大半がこちらを向いたのは気のせいであってほしい。

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