鰐嫁

深川夏眠

７月20日

　暑い夏に避けたいことの筆頭と言えば引っ越しと結婚式ではないでしょうか。

　私は図らずも前者の必要に迫られつつ、先日、後者に出席してしまいました。兄の挙式披露宴でしたが、異様な雰囲気に辟易。新婦が感謝の手紙を朗読……という、よくあるアレが、普通じゃなかった。「お父さんお母さん」ではなく「天国のお姉ちゃんへ」だったという。それだけなら列席者一同もらい泣きでメデタシ×２ってとこでしたろうけど、新婦の作文に曰く「お姉ちゃん」とは年子で顔がソックリで、兄とは合意の上の三角関係だったとかなかったとか、それでもどちらかというと兄は姉ちゃんの方と結婚したい意向が強かったらしいが、どこで話がこんがらがったのか、姉ちゃんは「もうおしまいです」的なダイイングメッセージを遺して死亡。新婦は「姉がドレスに合わせたがっていたロンググローブです」とて、その長手袋をお披露目。死んだ姉ちゃんは一体どんな衣裳を選んでいたんだろうかと目を疑った。色は青鼠（あおねず）というか銀鼠（ぎんねず）というのか、#5e7c85 とか #9c9c9c ですよ、検索して（笑）――で、ゴワゴワした感じ＋変にデコラティヴで、およそウェディングドレスにはマッチしなさげなブツ。新婦がそれを装着したとき、私は「ワニの前脚みたいだなぁ」と思って、よし、今後コイツを嫂（あによめ）ならぬ鰐嫁（わによめ）と呼んでやろう、そう心のネタ帳にメモした次第でありました。