自殺の水際で
韮崎旭
自殺の水際で
自殺の水際で徘徊する、跳ねる
しぶきを見て水底に返した悲しいふりをしていたら仮面に食われる夜が近い
虹色の蝶が呪詛を振りまく 戻る道を探す
終わらない青年期は此方 閉じ込めた青年期は此方 おわれない青年期は致死量 閉塞して 終息はない病に囚われた 自殺に際して何かをもうないという 探せ
会わせなかった青年期の死体を抱いて今日も君を憎しみで飾る
君はいない 君の名はない 自傷的崩落を抱えて七色の粉砂糖の毒薬を飲む現世に福音を
名前を探してみることがあるのか この場所が私の腐乱した心房かこの部屋が私の腐敗した心室か 泣くことはできない 体がないから
どこで探してきたんだそんな古い落書き 筆記された年代も知れぬ愛らしく残忍な書状を見つけた、あなたが忘れるように この喉を壊したとして 体がないから
自殺の水際で逍遥する、訪れぬ朝、惨憺たる夜明け 照らし出す死体の山に感慨を持たぬ絢爛たる夜更け
自殺の水際でただ鳴らすステップは 連鎖
原子のように生きられたら、もうないだろう、あなたが見ることのできた悲惨を晒すホームシアターの壁に体液の染み健康そうになればよいのだろうかあなたの壊れた叫びは救難信号の形にならなかったから、別れを
自殺の水際で
自殺の水際で 韮崎旭 @nakaimaizumi
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