第七話 罪人よ大志を抱け
自分の決意を冗談と罵る彼女を良正は許すことができなかった。
「冗談、だと……ふざけるなァアアーッ!!!!」
「えぇ〜、本気なの〜? も〜、さっき謝ったじゃ〜ん!」
謝った、そう口にする彼女に、彼の怒りはさらに高まっていき、
「いや、入らんッ! 誠心が伝わってきてないッ! だから、あんなの謝ったに入らんッ!!」
頑固ジジイの口調に近づきながら、彼女の非を打つ。
「んもぉ〜! ど〜なっても知らないよ〜!」
「吠えとけクソ駄犬が。ふっ、どうした、来ないのか? ならこっちから、殺ってやる――」
良正は似合わぬ台詞とファックサインを残し、右手から落ちた短刀を再度手にする。
そしてまた、その切っ先を彼女の方へ差し向けると、その方へ全力疾走で向かう。
身体を動かせ、脳を動かせ、言葉を見つけろ
それさえ出来れば、アイツなんてどうってことない
✣
――俺はあの時、一体どんなことを考えていただろうか
――俺はあの時、一体どんな顔をしていただろうか
きっと、しょうもない怒りのせいで頭はいっぱいだっただろう。
しょうもない怒りのせいで顔は生来の
――嗚呼、なんて見苦しい人間なのだろう
何故、伝説の勇者相手に一瞬でも勝てると思ってしまったのだろう。
何故、俺はこんな伝説の
もしあの時、反応しないでいれたら、あんなことしなかったら……
「こーーーーんなことにならずに済んだのォにィィィィィィィィィィィィィイイイイッ!!」
「だ〜か〜ら〜、さっきちゃ〜んと言っといてあげたのに〜。ど〜なっても知らないよ〜、ってね~!」
「……ず、ずびィばぜんでじだぁぁあああああああああ!? あの、チョー痛いんですけどぉ、こぉぉおおおおお! れぇぇええええええ!!」
先程から良正の声が所々力んでいるのは
アレ、とは必殺『傷口消毒液&ガーゼ』のことである。
そのじわじわ迫ってくる痛みと、悔恨の念から良正はこんなことを思っていた。
そこのやんちゃボーイズ&ガールズ、あとは運動部の人、よくこれ食らってません?
痛いですよね。“超”が付くほど痛いですよねぇ!
僕、絶賛それを食らってる最中なんです。
何故って?
喧嘩ふっかけてぼろ負けしたんです、勇者と喧嘩したんです。
バカで、力加減とかわかんない奴なんです。
一瞬、時を飛べたんだから倒せるって思っちゃったんですよね。
最初のうちは、【称号なし】と【伝説の勇者】との差を語彙力で、圧倒的根本的な言の波で、そこから放たれる言霊で埋めてたんです。
でも、奴は称号による
これがどんな言霊を放っても強いんです。
軽く僕の数十倍程度で、総量、出力共にエグいんです。
今までの人生二十一年間の僕の頑張りは称号の前に散りました。
そして、僕は思いました。
勉強ってなんでしょうね、と。
その結果、医務室です。
今いるここ、医務室です。
結局、勇者の言うことを聞くはめになりました。
やはり、奴の教師をやらされるようです。
――僕、これからどうしましょう
と、良正の不安は増す一方だった。
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