結婚式

A

第1話

(痛ぇ~っ)

俺は起き上がった。

(ちっくしょう、なんでこんな時に...!!)

俺は時計を見る。もう始まっている。周りに人や車はもうない。「立ち入り禁止」と書かれたテープで囲まれた場所に俺はいる。あれから随分と時間が経っている。それにしても置き去りとは酷い。病院にでも連れて行ってくれれば良かったのに...そう思って、自分の身体を見る。しかし、目立った外傷は無かった。意識もある。所々痛みはあるものの、軽症で済んだようだ。ということは、外傷の少ない自分よりも周りの重傷者を優先したということか。なら仕方ない。そうと分かれば、急ごう。俺は走る。今日は俺と妻の結婚式なのだ。

 お互い式の当日までは服装を見せないようにしよう、ということで、俺はスーツを注文した店で着替えた後、10分程度歩いて式場へ向かい、妻と合流する予定だったのだ。しかし、式場へ向かう途中の横断歩道を歩いてる時、信号無視で突っ込んできた車に歩行者のほとんどがはねられた。かなりの衝撃だったので、ヤバいと思ったところで、意識が飛んだ。それからもう3時間近く経っている。式は1時間以上前に始まっている。

 右足の痛みに耐えながら、走った。そして式場に着く。受付にことの成り行きを説明している暇なんて無い。受付をスルーして予約していた会場へ走る。

 部屋の前に来ると、扉越しに、中の音が聞こえる。親友の声だ。今はスピーチ中なのだろう。しかし、なぜか泣き声も聞こえる。というか、新郎がいないのに、式は始まっているのだろうか。とにかく今の現状を知りたくて扉を開ける。すると、ほとんどの人が下を向いたり、悲しそうな顔をしたり、中には泣いている人もいる。何があったのかと混乱する俺の耳に、泣いている親友の声が響く。


「中止になるのかと思いました。しかし彼女の、彼は今日やることをきっと望んでいるという言葉で確かにそうだと思い直しました。あいつは、不運にも、本当に不運にも、挙式の日に亡くなりました。だけど、あいつは暗いのが嫌いです。今日は楽しく、あいつの式を盛り上げてやって下さい」









 乾杯のあいさつが終わった後も、会場は静寂と、妻の泣き声で溢れていた。俺にとって、最悪の結婚式となった。

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結婚式 A @lal

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