第5話 反乱軍
▼前回のあらすじ▼
転移の魔術具を完成させるためにチナと共にムースヘイムに行くことになったファフたち。
しかし、定期船に乗るのに必要な身分晶を持っていなかった。
▼▼▼▼
あれから30分。
チナ「そこをなんとか!」
チナが定期船のスタッフに掛け合っている。
「すみません、いくら
チナ「う、うぅ……。そうだ、ファフさんにあげた魔術具で入国審査官の視界を奪って――」
ファフ「ダメです」
チナ「そ、そうですよね……。どうしよう……」
困り果てていた俺たちのところへ何者かが声をかけて来た。
「お困りのようね!!!」
ファフ「……?」
誰だっけ、見たことあるような……。
「あの時は世話になったわね、ファフ!」
ファフ「あ、あぁ! ネメアの獅子のときの!」
どこかで見たことあると思ったら、ポールトネメアを襲ったネメアの獅子から間一髪のところで(ロムラスが)助けた少女だ。
運良くロムラスの姿は見られずに済んだみたいだったが。
その後彼女はスフィアライトの魔術具を俺に押し付けてすぐにどっかいったんだった。
「あの時は急いでて自己紹介してなかったけど、私の名前はユズ。ヘルヘイム反乱軍のリーダーよ!!」
え、それって大声で言っていいの?
チナ「あー! 聞いたことあります! メチャクチャ姫ですよね?」
ユズ「いやその呼び方はやめて!? 仮にも本人の前よ!?」
チナ「それで、反乱軍のリーダーが何のようですか?」
ユズ「ふふっ、話は聞かせてもらったわ! 身分晶がなくてムースヘイムに行けないんでしょ?」
チナ「そうなんです、どういうわけかファフさんが持ってなくて……」
そりゃそうだ、この世界で生まれてないんだから。
ユズ「ほら、これ」
ユズが手渡してきたものは――
チナ「身分晶!? これって……」
ユズ「そう! あなたたちの話を聞いて急いで作らせた偽装身分晶よ」
ファフ「ぎ、偽装……? 大丈夫なのか?」
ユズ「大丈夫よ、私たち反乱軍の技術力は世界一! なんだから!」
不安だ。
この世界の法律は詳しくないが、それで入国審査引っ掛かったら偽造身分晶所持で逮捕されそうなものだ。
ファフ「そういえば、どうして俺の居場所が分かったんだ……」
ユズ「それはねぇ――」
ユズはファフの腕についている装飾品、即ちスフィアライトの魔術具を指さす。
ファフ「え、これ?」
ユズ「そうそれ。その魔術具には最新鋭の追跡魔術がついてるの! どうかしら、私たちの技術力がわかったかしら?」
GPSみたいなもんか。
チナ「ほお! 追跡魔術ですか、珍しいですね! どういう術なんでしょうか、気になります!」
チナが術に興味津々だ。
ファフ「技術力はわかったけど、どうして俺のストーカーなんか……」
ユズ「ちょっと! ストーカーとか人聞きの悪いこと言わないでよ。ファフ、あんたが使えそうだと思ったからストーキングしたまでよ!」
ファフ「……。それで、偽造身分晶をくれるんだよな?」
ユズ「ちょっとまった! もちろん、条件付きよ。それをのんでくれるなら、それはあげる。どうかした?」
ファフ「条件次第だな。反乱軍に加われ、とかだったらムリだ。俺はこの世界の政治事情とか興味ないしな」
ユズ「この世界の……? まあいいわ。反乱軍に入れとは言わない。ズバリ、
ファフ「
ユズ「アルファガルドに入るためよ。もっと言うなら、神国のトップたちの考えが知るため」
アルファガルドと言えば、チナが話してたとこだ。
魔結晶ですべてを賄っているとかなんとか。
そもそも神国とは、アルファガルド・ミドガルド・ヘルガルドの三つの国でできた集合国家だ。
ファフ「それと
ユズ「知らないの? アルファガルドに入ることが出来るのは本当に一握りの人物だけ。商人だったら国に認められた数人だけ、国の兵士でも最もエラい奴しか入れない。冒険者だったら――」
ファフ「
ユズ「そう。そしてそこで、ウワサの真相を確かめたいの」
ファフ「噂?」
ユズ「魔結晶を人の手で作る――人造魔結晶計画」
魔結晶……。
持ってるわ。
チナが驚愕の表情を浮かべている。
チナ「聞いたことありません! 魔結晶を作るなんて、神でもなきゃ無理ですよ!?」
ユズ「でも情報が入ってきてるの。他にも――まあいいわ。で、どうするのかしら? 条件をのむの?」
ファフ「ζ級になるかどうか、だったな?」
……あれ?
ファフ「ユズ、どうして既にいる
ユズ「……神国の
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