最弱スキルを林檎を食べてレベルMAXにしたら、世界を救えた話!?

桜乃ありす

最強の少女

「スキル」と言われて何を思い浮かべるだろうか。

訓練を通して自らで手に入れた力?

知識?あるいは、能力?

そうであってそうではない。

この国ではそうではないのだ。


村には誰からも頼りにされる少女がいた。

「グロウ ザ ミクロン!」

魔法を一度唱えれば、大きな魔物が現れる。

微生物が大きくなった魔物は少女への頼まれ事を果たす。

こんなことが出来るのは世界で1人だけ、その名はメルシィ。


12歳になったばかりのある少女は嬉々として、女神の泉に来ていた。

この国、アムレートでは、12歳になると皆、女神からスキルを貰う権利を手にできる。

スキルは自分の才能の様なものだ。どれだけ努力しようと、レベルアップすることは絶対にない。

しかし、ひとつだけ方法があった。それはまた別の機会に。

「あなたは、村娘のメルシィ・リデルですね。」

女神はメルシィの頭をそっと撫でた。

「女神様、スキルを貰えるんですよね?」

「ええ、もちろんですよ。」

女神が手から光を出して、メルシィの手に静かに触れた。

「あなたのスキルは·····。」

そこでピタリと止まってしまった。

それから、糸のように細い目から女神は大粒の涙を落とした。

「まあ、可哀想に。あなたのスキルは最低級の微生物を生み出す能力です。」

絶望が顔に浮かんだ。

アムレートでは、それを引き当てる者こそ少ないものの、最低魔法のひとつだった。

「冒険者になるのは諦めなさい。」

石でも乗せられたように、体が重くなった。

さて、スキルをレベルアップする方法だが、林檎を食べることだ。

林檎なんてどこにでもあるだろう。という考えを持つものがいれば、それは大間違いだ。

林檎は貴重で神聖な果実だ。

農家はいるが、その多くは果物屋などの庶民の手の届くところではなく、王室に出荷される。

目にすることなど滅多にない果実である。

が、メルシィ・リデルの実家は林檎農家だ。代々、林檎を育ててきた。

木になった丸々とした真っ赤な実をメルシィは見つめ、扉を開けた。

「どうやったかね?」

母が尋ねたが、口に出せるようなスキルではない。聞こえぬふりをして、言い放った。

「林檎農家を継がせてください。」

それが、少女の快進撃の始まりだった。

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