第182話 『ミランダ嬢、取り調べる。』


 馬車の中、正面に神妙な表情で座るリゼ・フォスターの顔を遠慮なく不躾に眺めるミランダ。

 決して美しいと言える容姿ではなく、どちらかと言えば可愛らしいという表現が当てはまる少女だろうか。

 不細工ではないが、美人ではない。

 所謂十人並みと言えるリゼの姿を眺め、しげしげとその平凡さ加減に首を捻るミランダ。


 彼女リゼの事は、ずっと気になっていたのだ。


 思い出したくない『黒歴史』の一部と化しているけれども。



 ジェイクが入学した時からミランダは絶対に彼と婚姻しなければならないと数多くの圧力に晒されていた。

 父も周囲の令嬢も、ミランダが選ばれるべきだというスタンスを崩さなかったのだ。

 それがどれほどの焦りを生じさせたか、今となっては忘れたい深淵の記憶でしかないのだが。

 とにかく、日々どうすれば彼の相手になれるのか、そればかり考えていた気がする。

 アンディのことは常に片隅にあれど、二度と叶うことのない想いだと諦めていた。


 押しても引いても全く反応の無いジェイクに焦れた。

 でも周囲の令嬢が自分を出し抜いて彼に近づかないよう意識を巡らせ、過剰な接触を避けるよう十分に目を光らせていたつもりである。

 彼の相手は私しかありえないのだと、自らを暗示にかけていたようなものだ。


 ……目を光らせて牽制を続けてきたつもりであるが、その防波堤ぶりが彼に評価されていたなんて全く想像できなかった。


 今では「良くもこちらの立場を利用してくれたな」とイラっとしないでもないが、当時は――必死だったから。


 ノーマークの庶民の小娘が、スタンドプレーに走ったという話を聞いた時には身体中の血管が捩じ切れるかと思うくらい腹が立った。

 こちらは一緒に出掛けるどころか、日常でもまともにコンタクトもとれないのにどういうことだ。


 身の程知らずにも程があるわ!


 と、その憤りの結果……

 我を忘れた怒りに突き動かされ、とんでもない実力行使に出てしまったわけで。


 いや、うん。


 悪かったな、とは未だに思っている。

 焦りからの衝動でやらかしてしまったが、ミランダは加虐的な趣味があるわけではない。

 大勢で寄ってたかって身体を抑えつけて水責めとか冷静になったらなんと怖い事だろう。


 あの時カサンドラが止めてくれなかったら、もしもの事故が起こっていた可能性もある。


 ――そのような頭を抱えて蹲りたくなるような黒歴史を経たが、今ミランダは毎日幸せだ。

 図らずも一般人であるリゼを直接攻撃したことによって、事態の深刻さに慌てたジェイクがアンディとの仲を取り持ってくれた形になったのだから。

 人生何が起こるかわからない、あそこでキレてしまったことが今の幸せに繋がるなんて。


 予期しないことではあったが、結果的に踏み台にしてしまったリゼに謝らないといけない。

 そういう想いはあったものの、時間が過ぎれば謝罪しづらいし。

 何より伯爵家の令嬢として、易々と平民に頭を下げるなど許されることではない。


 結局機を逸して現在に至るが、彼女の事は気になっていた。


 こんな何も知らないポッと出の平民がジェイクを好きだなどと想う事さえ図々しい、というロンバルド派の一員としての想いは燻っている。

 でも、叶わぬ人を好きになる切ない女性としての気持ちもミランダは知っている。


 学園でも知人からでも、チラチラと彼女の話を聞き留めるようにしていた。



 ジェシカがリゼのことについて言及したのはいつのことだったか。

 『面白い女子がいる』とぼやき、その相手がリゼだったと分かった時は驚いた。


 聞けばジェイクに近づくために剣術の講義を受け続けているというではないか。

 往生際が悪い話だと呆れていたら、二学期になった今もその活動は続いているらしい。

 別グループで実際に会うこともないのに無駄な事を――


 だが、フランツの話を聞いて目が点になった。


 あのローレル三兄弟の末弟が!

 リゼの事を随分気に入って肩入れしつつ親身に相談を受けていると聞いて度肝を抜かれた。


 彼の長兄はローレル男爵家の当主だったが、ダグラス将軍の片腕だ。

 その功績の多さから現在は子爵家に陞爵しょうしゃくされた人でもある。

 本来はジェシカの生まれたバーレイド家の傍系だったはずなのに、今の代で随分と立身出世を遂げた有能極まる副将軍様がフランツの上の兄だ。


 爵位こそ継げない男爵家の末弟として市井で暮らすフランツも血統で言えばサラブレッドで、過去勧められた縁談を受ければ今でもどこかの領地を治めるお貴族様であった。

 アンディも彼の事を大変尊敬していて、親子とは言わないが随分仲良くしてもらっているらしい。



 そのフランツが直接剣の指導をして、更にお気に入りとかどういうことなの。



 話を聞けば聞く程、リゼの事が良く分からなくなっていた。



 極めつけはさっきの光景だ。

 いくら外門までとはいえ、彼が女子と二人で帰るところなんか今まで見たことも聞いたこともない。

 我が目を疑うとはこういうことか、と動転して言葉が出なかった。



 ……勿論、ロンバルド家の者としてはたかが一般人のリゼとジェイクが仲良くするという状況は面白くない。

 危機感を募らせる状況と言っても過言ではない。


 だが一旦ジェイクの嫁争奪戦線から離脱し、彼らのおかれた状況などを俯瞰して見れば――まぁ、そこまで目くじら立てて怒鳴り散らし、危害を加える意味もないのではないか?


 ウェレス伯爵家の人間とは思えないような、そんな思考にも至ってしまう。


 いや、正直に言おう。


 あの時自分に真っ向から立ち向かい啖呵を切ったこの少女。

 普通ならば身分の壁や立ち塞がる困難な状況、そして己の想いがいかに無謀かに気づいて落胆し諦めているはずだった。

 手の届かない望みの無い相手に”本気”であるということは辛いもの。


 今頃は観念しているものと思っていたのだ。 


 だが諦めていないどころか、確実に仲を進展させて彼と一緒に下校するまでに至るとか。







     経緯が気になる。

     興味がある。


     何があったか、知りたい。






 それはまごう事なき、純粋な好奇心だった。






 ※  




 リゼとともに馬車から降り、行きつけのカフェに入る。

 カフェと言っても会員制のようなもので、使用権を持っている人間しか利用できない主に貴族の令嬢御用達のカフェだ。


 看板や目印もないので、何もないただの建物にしか見えないはず。

 紹介制で一見さんお断りのこのお店は、学園の女子たちが放課後良く屯しておしゃべりに花を咲かせる空間でもあった。


 ミランダはその立場故、かなりの優遇を受けている。

 奥の個室へ案内され、周囲の視線を遮るテーブルでリゼと再度向かい合って着席した。


 彼女は絶句した様子できょろきょろと建物内を見渡し、躊躇いがちに口を開く。


「あの、ミランダ先輩。

 私、生憎手持ちがなくて……情けない話ですが、貸してもらっても良いですか?」


 彼女は掌を口元に添え、こそこそと小声でミランダに懇願してくる。

 まさしく小市民としか言えない彼女のお願いに、フッと口元が緩んだ。


「結構ですわ、誘ったのはこちらですもの。

 お気になさらず。

 そもそも、いくらかなど私も存じませんもの」


 会員制と言うだけあって、提供されたものについては全て当家に請求が行く。

 一々行くたびごとに支払いをするという習慣がミランダにはなかった。



「先輩、私に何の用ですか?」


 彼女が眉を顰め、真正面から問いただす。

 馬車の中では、これからどこかの山中にでも埋められるのではという、警戒心をむき出しにしていたリゼ。

 だが行き先がカフェであることが分かるとホッとした様子で――でも中がこのような一見さんお断りの選民意識溢れる空間だったせいで、再び猜疑心が湧き出ている。


 どうしても彼女と話をしたかったので、命令だと言ってしまったけれど。

 もう少し柔らかい表現にするべきだっただろうか。

 まぁ、今となっては詮無きことだ。


「用――と言うのかしら。

 貴女、未だにジェイク様の周囲をうろうろしているそうではなくて?」


「………。」


 彼女の顔が一層険しくなる。

 元々気性の強い人間に見えたが、そこに抵抗心が乗せられると一層棘の強さが目立った。

 怯えるでもなく、キッと睨みつける彼女の佇まいはか弱い女の子の持つ雰囲気とは違って見える。

  

「つまり、また御忠告ってわけですか?

 ジェイク様に近づくなと言われるのは初めてではないですけど」


 かつて彼女に危害を加えたのはこちらの方。

 だからリゼが疑ってかかるのは当然の事だが――あの時もそうだったが、この娘は力や上から押さえつけるだけでは止めることはできないだろう。


 彼女の蒼い目に、強い不審が宿る。

 まぁ、無理矢理連れ込んだ先で尋問まがいに話しかけられれば、警戒もするか。


「私は誰かに断りを入れなくてはいけない、天に背くような真似はしていません。

 いくら先輩に注意を受けようとも、その謂れはないと思っています」


 きっぱりと言い切る彼女の目に迷いもブレもない。


 親兄弟や親戚に言われて、だとか。

 身分や金に目が眩んで、だとか。

 社会的地位ステイタスが、外聞が――などという外的要因の存在しない、ただただ己の想いが拠り所となる意思は強いものだと思う。


「そうですか、ですが何も接触なくジェイク様と今のようなお近づきにはなれないでしょう。

 一体貴女がどのような手段を用い、厚遇を得るようになったのか。

 私はとても興味がありますわ?」


 しばらくリゼは瞑目した。

 逡巡したのは一分もなかっただろうか。

 やがて、再び目を開けてミランダの表情を視界に映す。



「…………。

 過程を話して、もしもそこに非難の入る余地がないものであれば、先輩は……

 私の想いを許容してくれますか?

 いえ。

 先輩方――と言えば良いでしょうか」



 要するに、卑怯な手管やズル、脅迫まがいな事情を用いてジェイクに近づいたのではないとミランダが納得するならば。

 今後その範疇において、リゼとジェイクの接触を禁止するようなことはするなとでも言いたいのか。


「ミランダ先輩なら、それが出来ますよね?

 ロンバルド派のお嬢様達は、貴女には逆らえないってお聞きしてます」


「ほほ、それは買いかぶりですわ」


 ころころとミランダは鈴の音のような笑い声をあげる。

 だが彼女の指摘は間違ってはない、正しいものだ。


 一度、アンディとの婚約が決まったという噂が流れた時を思い出す。

 今まで周囲にいた取り巻きの令嬢達がミランダを見限ろうと画策し、別の女生徒を掲げようとした動きがあった。

 だが結局、婚約話自体がロンバルド本家の肝入りの縁談で、なおかつアンディが騎士団幹部候補なのだと周知されるとその話も蝋燭の火のように掻き消えた。

 依然変わらず、今もミランダには派閥の取り巻きが大勢いる状況と言って差し支えない。


 ロンバルド派ではそれなりの地位を築いている実家だが、勿論他にも有力な家はある。

 自分の家より家格の高い家のお嬢さんが他にはいない状況だから、自然とその立ち位置についているだけだ。

 学級委員として選ばれた生徒の中には、ウェレス伯より高位な名門貴族もいるが通っている生徒は男子ばかり。


 自然に定まった女子派閥の”頭”とは言え、それを認められるだけの後ろ盾を持っている自覚はあった。

 アンディにとっても十分以上の利用価値ある権力を持っていた。


 そんな派閥のトップを気取るミランダに既に定まった婚約者がいることで、誰もミランダの目を気にする事無くジェイクに一斉にアプローチを始めることになった。

 その結果、彼が結構困っていることも知っている。


 二度と助けてやるか、と傍観している自分は悪くないと思う。


 勿論、令嬢間同士で抜け駆けだの出し抜いただので争いが起こりそうになったら仲裁するのは自分の役目だ。

 派閥内を綻びのないようまとめつつ、ジェイクに関することで結束が乱れるなどというある意味本末転倒なことが起きないよう重石になるのが学園内での自分の仕事だ。

 それくらいは心得ている。


「協力して欲しいとか烏滸がましいことは全く思ってません。

 前に想うのさえ駄目って言われましたけど、それくらいは許して欲しいんです」


 彼女は真摯な姿勢で滔々と語る。 


「私が諦めるのは、ジェイク様本人に拒絶された時だけです。その時はすっぱり諦めます。

 でも先輩方に水に浸けられようが山に埋められようが縛り上げられようが、気持ちは変わりません」


 言いたいことは分かる。

 いくら身分差があるからと言っても現時点では一応クラスメイトだ、話をしているだけで身の危険がある状況は面白くないだろう。 


「――ただ話をしているだけで首を絞められたりしないか? と警戒しながら生活したくないんですよね」


「分かりました。

 貴女が不正な手段を用い天に悖る方法で”擦り寄って”いるのでないと判断した場合。

 過去のような身に危険の及ぶ実力行使が起きないよう、私も努めて気を配ることをお約束します」


 己の黒歴史が一瞬脳裏を過ぎった。


 ……まぁ、実際問題ジェイクが愛人を作るくらいは別に非難されることではないしな、とも思う。

 あの時はカーッと頭に血が上り、ジェイクの親切心につけ込んで擦り寄ろうとする平民風情が! という感情の方が先に立ったけれど。

 リゼのような、”何も持たない者”。それが自分を差し置いて彼に好意を持たれようなどと厚かましい。


 間違いなく、当時の本心だった。

 自分が馬鹿にされているようで、心底不愉快。

 更に自分の立場もあった。取り巻きから注進があった以上、座して見守るということは出来なかったのだ――と、言い訳をしてしまう自分に苦笑した。


 別にジェイクが彼女を好きになって囲う分には、ミランダの関知するところではない。

 いきなり嫁にするとか言われたら泡を食って大反対するが、愛人くらいは彼の権利だ。

 正妻以外に愛人を持つのか……と、彼の選択に幻滅するだろうが。


 そこまで制限する権利はミランダにもない。



 もしも自分が彼の正妻になると決まったら、愛人の存在など認めないと声を上げてリゼを攻撃し続けたはずだ。自分はそんな不誠実な男は大嫌いだ。

 でも今の自分はアンディの婚約者で、そして彼は絶対に愛人を囲うようなことはしない。もはやジェイクが誰と恋愛しようがどうでもいいと言えば、どうでもいい。

 愛人の立場を利用して場を引っ掻き回す悪女ならその限りではないが。


 ジェイクの未来の正妻の心が広ければそんな折衝も起こらないだろうし、まだ見ぬ彼の正妻との取り決めなどミランダの知ったことではない。




 そんな自分の胸の裡など知らないリゼは「本当ですか?」と破顔し、安堵した様子を見せる。


 リゼの言い分に譲歩して頷いてしまう程には、気になる。

 果たして彼女は、自分の知らない間どのようなやりとりを経、彼とここまで親しくなったというのか。





 ※





 リゼは最初の内、どこまで話そうかと悩む素振りを見せた。

 だが話を公平に聞いてもらうためということで、一学期にあったことや夏休みにあったこと、そして二学期の現在。

 一体彼とどんな状態なのかを、思った以上に赤裸々に話してくれた。


 リゼ本人が言うには、下手に隠し事をして後でつつかれるのが面倒だとのこと。

 やましいことは一つもないですしね、と彼女は挑戦的に笑った。


 彼に近づくために剣術講座を採っていることは事実だが、今は剣術大会に出たいと思う程楽しんで習っているということ。

 その過程で個人的に指導を受けているフランツとも親しくなったこと。


 夏休みにラズエナでジェイクに会ったことや、一学期の誕生日プレゼントが功を奏した結果二学期に家庭教師役を仰せつかっていることなど。





 話を聞く内にミランダの顎はカクンと外れ、そのまましばらく元に戻らなかった。


 


 彼女の行動力、パワーには呆れるくらいだ。

 一目惚れのようなものだったというが、それだけで一念発起できるだけの熱意はどこから生まれるのかと戦慄する。

 というか、彼に近づくために剣術を学ぼうという発想がまずおかしい。

 しかもそれが功を奏しているのが猶更不可解だ。


 ジェイクからしたら彼女はとても面白い素体であろうとは思う。

 身近に全くいないタイプだし。



 でも家庭教師をすることになっただとか、乗馬の練習でロンバルドの本邸の裏にある森に行ったとか聞かされた時のミランダの想いはただ一つだった。







    それで付き合ってないの……?

 




 誓って言うが、ジェイクに愛人を作れだとか、そんなことは欠片も思ったことはない。

 リゼの思いを積極的に応援できる立場でもない。


 だが、あの女性関係の問題がこの上なく苦手で一線を引いた日常を送っている彼から、そこまでの対応を引き出せるのは尋常じゃない。

 あの人は無駄に誤解を生むような行動はとらない人だ。


 フレンドリーに見せかけつつ、決して他人に深入りしない”のれんに腕押し”なやりとりはミランダも嫌と言う程味わってきた。

 誤解があっても全く問題のないミランダ相手でも隙の一つも見せなかったのに。


 もしミランダがリゼのような対応を最初から受けていたら、今頃問題なく彼の婚約者に収まっていただろう。

 今となってはさほど嬉しくもない事だが、親兄弟にしてみれば万々歳な事態だったことは想像に難くない。





「……とまぁ、こういう状態で。

 今後も自分の手の及ぶ限り、思うように頑張ろうと思ってます」


 散々、ミランダの想像力を超えるような信じられない話を聞かせてくれたリゼはようやく一呼吸置く。

 運ばれてきた紅茶を口につけ、「ぬるくなっちゃった」と独り言を呟く彼女を胡乱な目で見やる。



「はぁ、そうですの」



 すっかり毒牙が抜かれてしまったような、気の抜けた返事を返してしまった。





 何と表現して良いのかわかりかねるが、ユニークな女生徒だと思う。

 負けず嫌いが昂じるとここまで突き進めるのか。


 叶わぬ思いに部屋に閉じこもってめそめそする女の子とは全く対照的で、行動力の化身か、と戦慄する。

 失うものがないからできることだと思うが、でもじゃあ好きにやってみろと言われてここまでひたむきに前向きに努力できる人間がどれほどいるだろうか。


 分の悪い賭けだ。

 前向きに努力したからと言って、結果がついて来るとは限らない。

 そんな努力など無駄に終わる可能性の方がよっぽど高い、虚しい足掻きのはずなのに。



「先輩方に迷惑をかけるようなことはこれからも控えるつもりです。

 見逃してくださいという言い方はおかしいですが、私は謝らなければいけないことをしてきたつもりはないです」



 物凄く真面目な子だと思う。

 何と言うか実直、という単語が制服を着て前に座っている。

 したたかな方法で彼を陥れようだとか、擦り寄ろうだとかは考えることもないような人だ。それは分かる。







「……そうね。

 貴女の好きにしたらいいんじゃないかしら」



 それ以外に、何も言うことが出来なかった。


 彼女達の行く末に、多大なる興味はある。








 だが――自分が言うのも難だけど、惚気を聞いている気分にしかなれない。





 乾いた笑みとともに、茶菓子を一つ口に放り入れた。

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