心の象
バァンッ
重厚な『大聖堂』の扉が蹴破られんばかりの勢いで開け放たれた。
「司祭のじーさま!スキル作らせて!」
「またお前か!?さっき出ていったばかりだろうに、ドタバタと帰ってきおって!」
「スキル作らせて!!」
「やかましいっ!声がでかい!こっちだ、さっさとついて来いっ!」
これ以上騒がれては堪らないと考えた司祭は、祈りの場から追い出すことを優先する。
せかせかと信徒の為のベンチの並ぶ身廊を歩き、中央から左の袖廊へと向かう。
その突き当りにそれはあった。
神と見られる大きな人影、槍や剣など武装した集団が描かれた
「ど○でもドアみたいになってる。」
赤い光の中にあってなおも緑のプラスチックの光が『EXIT』を主張する。
金属の冷たい質感の銀色のノブと鉄錆びの匂いも健在である。
「『始まりのドア』異邦人にしか開けん
話をぶった切りながら、ドアを抜ける少年。
左腕だけは司祭に申し訳なさそうな目を向けた。
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一瞬の意識の暗転
その後には、真っ白な空間が広がっていた。
「ついこの前出ていったばかりなのに、帰って来た時にホッとしますね」
ぼくが笑いかける先には
「そう言って頂けるのは嬉しいですね。この世界は楽しめておりますか?」
微笑みで応じてくれるメイカさんがいた。
チュートリアル部屋がスキルを創る場所だったのか。
「楽しんでます。ワクワクの連続です。」
「それは何よりです。」
嬉しそうに笑ってくれるメイカさんに、シカに殺された無念も浄化……されてたまるか!?
「里帰りみたいに、ほんわかしちゃうとこでした!スキルを作りたいのですが、お願い出来ますか?」
「もちろんです。どういったスキルをご希望でしょうか?」
「シカを殺せるスキルを!!」
「……シカ?」
キョトンとした顔で聞き返されてしまった。
「文を作れ、単語で話さない」
「あ、エル様もお元気そうで何よりです。」
メイカさんがめちゃくちゃ暖かい目でエルを見ている。
エルもここで、ぼくの腕にしてもらったからね。
里帰りみたいなものだろう。
「お久しぶりです、何とかやってます」
ぼくの左腕ってそんなハードなポジションなの?
とりあえず事情を話そう。
「公式の武闘大会イベントに備えて装備を作りたいのですが、要求された素材を取りに行ったらシカに殺されました。腹が立つので殺し返したいです。」
うん、簡潔
「なるほど、そこでシカを殺せるスキルを欲しいと繋がるのですね。」
「そうなります!ただ、どうすれば殺せるのかが分からないのです。」
シカは圧倒的に強い。普通のスキルじゃダメだ。
オリジンスキルで打開出来ないだろうか……
適正レベル的には負けて当然だから、ゲームバランスを超える程のモノが必要なんだけど。
どうすればそんな物を生み出せるのだろうか?
「『
「そんなのあるんですか!?」
「はい、ですが本当に
「『心象』……想い。」
そんなに深いものが、高々17年のぼくの人生にあるのだろうか?
「この空間は、時間の流れがチュートリアル同様に引き伸ばされてます。存分にお考えください。」
「ありがとうございます、ちょっと考えてみます。」
うーん。
ちょっと思い返してみようかな。
自分の中にある『心』は『想い』は何があるだろうか。
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AIは眺める、坐して黙する少年を。
彼は異形の腕、その力の代わりに痛みを背負う事を選択した稀有な
彼ならば、主に奉納出来る程の『想い』を引き出せるかもしれない。
それが、私達を創り給うた主の悲願の為になる。
「ラティ様、貴方は何を想い。何を欲しますか?」
期待を込めた眼差しを向ける彼女のことを
左腕だけは、静かに見ていた。
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