世界のルール

 最近、忘れてたことがある。


 このゲームは、あまりにも自由度が高い。


 ぼくの場合は異形腕エルぶん回したり、槍をぶん回したり好き放題に動いてる。


 以前までのゲームにあった。


 完全な規定のモーション、規定の威力の攻撃はたぶん


 ぼくの『くるみ割り人形』もそうだけど、その時の体勢や勢い、気合で威力てごたえが変動している。


 他の攻撃スキルは分からないけど、おんなじゲーム内なら恐らく似たようなシステムだと思う。


 自分の動作アクションが、大事なんだ。



 以上が


 そして、何か言いたいかといったなら。


「アルマさん、動作アクションでどうにかなってたんで、スキル構築やポイントの割り振りを忘れてました。」


「ホワァっ!? レベル・スキル制RPGの良さが息してないぞ!!?」


 アルマさんのツッコミの通り。


 すっかり戦闘に夢中になっててレベルが上がってるのにステータスを割り振ってなかった、新しくスキルを取ることもしてなかった。


「エルもツッコミ入れてくれればいいのに」


「私には元々ステータスだとか、そういった物は見れなかったからな。忘れるもなにもほとんど知らないよ。」


 なるほどねー


 そういえば、みんなはどんなステータスなんだろうか?


「アルマさん、もしよければステータスとかお見せ頂けませんか?」


 まぁ、次のイベントが戦闘系だから見せてくれないだろうなぁ。


「見せ合いなら別に構わないぞ?


 正直、初イベントが協力ものじゃないからだろうが。ステータス関連の情報ってあんまり無いし。


 俺にとっても人がどんなステータスしてるか、どんな構成が正解かが全く分かんないからな。


 ほとんど手探りでプレイしてるのが現状だ。


 PS(プレイヤースキル)が高い訳でも無いし、データは少しでも欲しい。」


 おぉ!ありがたい!


「ありがとうございます!

 では、見せあってみましょうか!」


 ステータスを表示したホロウィンドウを

 アルマさんへ見せる。


______________



【Name: Laty】


【種族: ヒューマン(一部を除く)】


 称号:『臨死体験ソムリエ』『持たざる者』


 LV: 18


 HP: 220

 MP: 225


 STR(力): 55

 INT(知力): 55

 DEX(器用): 60

 AGI(敏捷): 65

 MIN(精神): 55

 VIT(頑強): 60


 SP(スキルポイント): 600

 VAR(拡張性): 1000


 オリジンスキル :

『愚者の傲慢』

混在之腕シェイクハンド


 システムスキル :


『戦闘スキル』


 無し


 ・特殊攻撃

【くるみ割り人形】


『特殊スキル』


 ・職業スキル

 冒険者 Lv:8


 ・称号スキル

『臨死体験ソムリエ』

『持たざる者』


_____________


 ん?


 前に見た時よりも、レベルは上がってないのにステータスが上がってる。


 ……あ、現実のステータス割り振りが加算されてるのか!?


 これは心強いな、ぼくは最初の10レベルまでのステータス上昇値を『混在之腕シェイクハンド』のスキルを作るときに捧げてるから……


 まぁ、悔いはないけどね。



 隣にいるアルマさんは考え込んでいる。


「どうですかね?ぼくのステータス。均等気味に振ってるんですけど。」


「……いや、低くないか?ディスってるとかでなくマジで……


 オレも見せよう。見比べようぜ。」


 アルマさんも虚空に指を滑らせて、ぼくの前にステータスを表示してくれた。



______________


【Name: アルマ次郎】


【ワービースト】


 称号:『知恵無き探求者』『迷いし者』


 LV: 22


 HP: 435

 MP: 460


 STR(力): 170

 INT(知力): 70

 DEX(器用): 25

 AGI(敏捷): 230

 MIN(精神): 70

 VIT(頑強):115


 SP(スキルポイント): 190

 VAR(拡張性): 87


 オリジンスキル :

『◼◼◼◼◼』


 システムスキル :


『戦闘スキル』


『初級剣術Lv6』

大断おおたち

斬払ざんばら

突刺とっさ


『初級軽盾術Lv5』

【シールドバッシュ】

【一点集中】


『特殊スキル』


 ・職業スキル

 冒険者 Lv:8


 ・称号スキル

『知恵無き探求者』


 ・種族固有スキル

『完全獣化』


 _____________


 ほへー?


「アルマさん獣人ワービーストだったんですね。」 


「あぁ、ほれ、ココ見てみ」


 アルマさんが髪をかき上げるとピョコんとビンク色で丸く尖った耳が出てきた。


「昔、アルマジロを飼っててな。


 何の獣人の選択肢の中にあったからつい選んじまった。」


「なんとも可愛らしいお耳ですね」


「だから、隠してんの。」


 ちょっと恥ずかしそうにしてる。


 あ、もしかして。


「アルマなのって」


「おぅ、ペットにしてたアルマジロがだったからな。イカしてるだろ?」


「いい名前ですね」


 思い入れがあるんだろう。子供のような笑顔で教えてくれた。


 談笑しつつも、お互いのステータスを読み合う。



「オリジンスキルは見れないんだな。」


「ぼくもアルマさんのは見えないです。そういう仕様っぽいですね。」


 切札的な物が多いからかな?まぁ口頭で伝えるのはセーフだろう。


「ぼくのオリジンスキルは左腕エルとステータスに補正を入れてくれるスキルですね。」


「オレのは身体の頑丈さを一瞬上げれる感じのやつだな。」


 迷わずに切札オリジンスキルの概要を教えてくれるアルマさんに好感を覚える。


 やっぱりいい人だな。


「ぼくの場合ステータスをコストにしてエルを手に入れたので、レベルの割にパラメータが低くなってます。」


「なるほどね、計算が合わないわけだ。」


 ちょっと考え込むアルマさん。


「もしかしてだが、パラメータの数字も大事だが何かしらがあるかもな。」


 ??


「いやな、レベルアップ毎に一定量パラメータが上昇する訳だが、ヒューマンの貰える総量が

 だから、数字に見えない要素がたぶんあるな。」


 ほへー?

 まぁ、あれかな


「最強のゴリラと最強の日本猿みたいに、種族ごとの『素の強さ』みたいなものがあるのかもしれないですね。」


たとえはともかく、そんな感じだろうな。

 まっ、検証班とか攻略ガチ勢が考察してくれるだろ!」


「二人だけだと検証する為の数字データも足りないですしね。

 まずは、ぼく自身の余ってるポイントをどう振るのか、何かスキルを増やすのかを考えてみます!」


「おう!ゲームなんだから鹿とやらもレベルを上げれば勝てる……ハズだ!」


「ですね!」


 そんなこんなで、長話してしまった。

 スキルの創造に教会おじさんとこに行かないとなぁ。


 考察や現状を確認できて満足したぼくたちは、そろそろ自分の冒険に戻ろうかなという空気になりつつあった。




 そんな中、広場で大きな話声がした。


「おいっ!『【悲報】俺たちのVRオンラインがゴリゴリのダークファンタジーだった件』のスレ読んだか?!!」


 ……スレ?


「いや、読んでない。何があったんだ?」


「とりあえずコレ読めっ!」


 そう言って、フレンド同士なのだろうか。

 肩を寄せ合って『新聞』を読みはじめた。



「アルマさん、スレって何ですか?」


「ゲーム内の掲示版の事だと思うぞ。


 手に持ってる『新聞』アレは『魔法素人でも読める、魔法の掛かった新聞』略して『新聞』だな。


 ゲーム内で掲示板を使えたり、日毎のニュースが書いてある新聞だ。普通の新聞のイメージからすると、ちょっと高いが、広場やギルドで普通に買えるぞ」


 そんなのあったんだ。


「オレも持ってるし、アイツらが騒いでるスレを見てみるか。」


 そう言ってカシャっと紙の擦れる音を立てながら新聞を広げて見せてくれた。


 日本の新聞よりもカサついてサラサラした手触りだ。


 表面は知らない文字の記事が並んでるが、手前に向けた読む面は馴染みの日本語になってる。

 相変わらず変なとこに力を入れてるなぁ。


「さてさて、検索検索♪」


 アルマさんは慣れた手付きで素魔法新聞をめくり、その掲示板を見つけてくれた。


 この瞬間が思えば、世界においての異邦人が

 それが、異邦人ぼくたちに知られた瞬間であった。

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