もう1つのゲーム

いつもの通学路なのにがとなりを歩いている。


ぼくの前に現れた、虚像の男

創造主クリエイター アンドレイ』

ならび歩くぼくにフレンドリーに話し始める。


「あくまでも、ワタシは録画映像みたいなモノだから君の登校もしくは出社まで残りどれくらい余裕があるのかは分からない。だから手短に進みながら話すよ。」


「お願いします。」


「うむ、まずこの『VRオンライン公式アプリ』の使い方と何が出来るかについてだが。使い方はイヤホンをしてアプリを動かせば『ゲーム』が始められる。『ゲーム』では『モンスター』を倒してレベルを上げたり『素材』を得る事が出来る。」


「君たちが昨日いた夢の中とおんなじさ、ただステージが現実ここに変わるだけ。」


おどけた仕草でとんでもないことをのたまう。

現実にモンスター?朝のニュースの原因はこいつか……


戦闘があるなら、僕はよく『』からペナルティをちゃんと聞いておこう。


このアンドレイなら、「現実だぞ?命は一つしかない。ゲームで死んだら死ね」くらい言いかねない気配がある。


「モンスターと戦って。こっちで死んでも大丈夫なの?死んじゃうの?」


「大丈夫。デスゲームなんてはしないさ。


ただ、ペナルティはある。


その1 戦ってたモンスターは消滅、別の場所でスポーン。きちんと倒せないと素材も経験値ももちろん手に入らない。


その2 1分間の操作不可。

ただし歩道で死なれて硬直して、その間に車に轢かれて本当に死なれるとかはゲーム会社的に困る。

よって目は開けられるし、やむを得ない場合は動ける。


その3 現実こっちでその日手に入れたアイテムの全ロスト


以上の3つがペナルティだよ。」


指折りながら教えてくれる。

ペナルティがあるのか…

ん?アイテム?


「そう!この世界げんじつとワタシの世界は互換性がある。アイテムをインベントリに入れて今日の夜に『VRオンライン』にログインすればキチンとアイテム欄に現実こっちで手に入れたアイテムが表示される。」


それは嬉しい。だけど、現実で『モンスター』と戦うなんて出来るかなぁ?


「アイテムが欲しいけどモンスターと戦うなんて無理?

向こうの世界のようにスキルやステータスもある。向こうにいるよりも効果が随分と落ち込むスキルもあるがね。


まぁ、物は試しだ。昨晩も使っただろう?メニュー画面を出したまえ。」


現実でメニュー画面?そんなの出せるわけ……


フォン


ちょっと念じると淡く光るホロウィンドウが視界に表示される。


……出せたよ。


「ワタシは出来ることしかお願いしないさ」


軽い調子で言ってるけど、とんでもない技術だ。


2022年の今もホロウィンドウなんて存在しない。


液晶が徐々に薄くなってはいるし、フィルム状の画面の開発も進んでるらしいのはテレビで見た。


それでも、何も無い空間への映像投影は


「驚いてるところ悪いが有るものは有るんだ、受け入れたまえ。」


…それもそうか。


「メニューの項目に『スキル』があるはずだ、そこから君は『スキル』を起動アクティベート出来る。


初めてログインした場合は起動前の状態で設定されているだろう。」


ぼくは、社会科の課題を写す時間が要るからちょっと焦っていた。

しかし、目の前の非日常にワクワクしてる。結果、焦りながら


「えーっと メニューから『スキル』と…それから、起動アクティベート。」


メニューの操作は思考だけですいすいと進んで深く読む前にスキルを起動アクティベートしてしまう。


そして、やらかしてしまう。


『プレイヤー:Latyのスキルを起動状態アクティブにします。』


『オリジンスキル:『愚者の傲慢』をします。』


あ………


しまった。

このスキルの効果は


【効果】パッシブVAR+1000


そして、


【行動】


……あちゃー。

現実の身体でも、あの痛みがくるとなるとちょっとキツそうだ。

もう少し覚悟を決めてから起動したかった。



ぼくが落ち込んでいるとから

声がした。


「落ち込んでるとこ悪いが、おはよう。

学校?とか言うのはさっさと終わらせて、あっちの世界へ早く帰ろう。」


左手というのは左側の事じゃない。

マイ レフト ハンドの事だ。


左腕はテラテラと濡れたような質感の黒々としたモノになっていた。

表面にはキョロキョロと興味深そうに幾つもの目玉がうごめいている。

大きな牙を乱杭歯らんくいばのようにやした口から真っ赤な舌が伸びている。


それら、目玉・口が昨日から

慣れ親しんだ弧を描く。


「存外、明日が早くきたね。」


『オリジンスキル:『混在之腕シェイクハンド』を起動アクティベートします。』


相棒エル現実こっちに来てくれた。

昨日からの日の浅いパートナーなのに、不思議と欠片ピースが噛み合うような充足感があった。


来てくれた事への喜び、そして歓迎を込めて。


「「おはよう」」


ぼくらは挨拶をした。

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