第9話合格発表

時は流れ、アイリーンさんとレストランで食事をしてから3日が経った。


 そう、ついに合格発表の日である。


 俺は推薦入学で進路は決まっているが、ザックとセレーネはまだ決まっていないのだ。なんだか少し変な感じだ。


 受験生達は自分が3日前受験した会場で合格発表が行われる。だから俺達3人は、朝一で3日前の会場へ向かっている。


 俺を挟んでザックとセレーネは2人で会話していた。


「あー、セレーネ。なんか緊張してきたな~」


「もう試験なんて終わったことよ?ふふっ、今更緊張して何になるの?」


「なあ!? いま俺のことバカにしたよな! 俺だって緊張するときはするんだよ!」


「ふーん、その調子じゃ大丈夫そうね」


「なっ!? セレーネ、ハメやがったな!」


「なんのことかしら~」


 セレーネはザックの緊張を解こうとあえて挑発したらしい。


 そんな2人を見て思わず笑ってしまった。


 いつも仲良くすればいいのに、と。


「ノルン? 何笑ってるの?」


「い、いや~何もないよ」


「ふーん、そう」


 セレーネは俺をじっと見つめた後、目を離した。


 相変わらず感が鋭いな。気をつけないと。


 そうして俺たち3人は話していると3日前試験を受けた試験会場に着いた。


 今更だが合格発表の方法は、大きな掲示板に張り紙が貼られる。そこに受験生の受験番号が書いてあればどこかしらの学校に受かっているということだ。

そして詳細を知るには合格受付事務所まで行き、受験番号を言うと、何ランクのどこの学校なのかが書いてある紙が入った封筒をもらえる。つまり志望校というものは元から存在しない。


 封筒の中身の紙の例を挙げるとこんな感じ。



【受験番号】 70524


【ランク】 Sランク


【学校名】 王立カルティエ学院







 門を通り過ぎ、しばらく中に入っていくと人だかりができていた。誰もが目の前の大きな掲示板を見ていた。

 自分の受験番号を釘付けになって探しているのだ。


 ザックとセレーネも自分の番号を探していた。


「……70525、70525」


「……70526、70526」


 およそ数分後、どうやら2人は番号を見つけたらしい。どこかしら受かっていることは分かったので2人は胸を撫で下ろした。


「もし受かってなかったら、お金の無駄だったけど受かっててよかったー」


「そうね。とりあえず合格受付事務所に行きましょ」


 そうして俺達3人は会場の敷地内にある事務所まで足を運んだ。


 数分歩くと事務所が見えた。どうやら俺達は来るのが他の受験生よりも早かったのかすぐに封筒を受け取ることができた。


「この中に俺の学校が書いてあるんだな」


「ええ、やっぱり緊張してきたわ」


「お前っ! 緊張してたのかよ!?」


「当たり前じゃない!」


 こんな時にまで言い合いしなくても…。


「ちょっと2人とも受付の人に迷惑だからそっちのほうにある広場に行こう、ね? いいでしょ?」


 俺はすぐ近くにあった広場を指して言った。それを聞いた2人はうなづいた後、広場に向かった。


 広場にはベンチがありそこに俺達は座った。


 ザックとセレーネは目を見合わせて同時に封筒の中の紙を取り出した。2人は顔を見合わせる。俺はあえて聞かないことにした。


「セレーネ、どこだった?」


「ザックこそ、どこなのよ?」


 そうしてお互いに紙を見せ合う。


それを見た2人は一瞬の沈黙の後、雄叫びをあげた。


「よっしゃーーーっ!」


「やったーーーっ!」


俺は2人に聞いてみることにした。


「どこだったんだ?」


「王立サーフェリア学院、Aランクの学校だ」


「私も、ザックと一緒。なんでだろ、嬉しいけど嬉しくない」


「お、お前っ!? 俺がいるから嬉しくないのか?」


「冗談よ、冗談。とっても嬉しいわ」


「ぐぬぬぬぬ、いったいどっちなんだよ」


 俺は2人を見てとても喜んだ。


「良かったな、2人とも同じ学校で。そんなふうに喧嘩するんじゃないぞ?」


 それを聞いた2人は俺の方を向いて言い放った。


「「喧嘩じゃない!!」」


 やはり息ピッタリの仲良しさんのようだ。そうやって喜びを分かち合っていると、後ろから声がかかった。


「ノルン君、3日ぶりかな?」


「アイリーンさん!」


「書類を渡しにきたわ。どうぞ」


 そう言って俺にザックとセレーネより一回り大きな封筒を手渡してきた。


「中身は時間がある時にゆっくり見て。一ヶ月後の入学式、楽しみに待ってるわ」


 そう言い残してそそくさと俺たちの前から去っていった。


 学校長の秘書であるアイリーンさんは忙しい合間を縫って俺に封筒を手渡してくれたようだ。感謝しないとな。


「それじゃ、村に帰るか」


「そうだな、早く合格を祝ってもらわねえとな」


「そんなこと言って、ザックはパパとママの顔を早く見たいんでしょ?」


「なっ!? そ、そんなことねえよ!」


 はあ、2人は仲がいいのか悪いのか分からないけど、大丈夫そうな気がした。


「言い争ってないで、早く行くよ?」


 そうして俺達3人は、王都を一時的に後にし、村への帰路についた。


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