第5話前日
俺達は男性と別れた後、3人で話し合って取り敢えず王都の中を散策することにした。そのために王都に入るんだが……。
「はやく王都に入ろうぜ!」
「そうよ、はやく入りましょ!」
「いや、ザックは分かるんだが、セレーネは足がパンパンじゃなかったのか?」
俺の言葉を聞いたセレーネは横腹に手を置いて胸を張り俺に満面の笑みを向けて言ってきた。
「何言ってるのノルン?王都よ、王都!足がパンパンとかどうでもいいに決まってるじゃないの!」
「そ、そっか……」
女の子ってよく分からないな。なんか目瞑って鼻歌を歌ってるし。
そんな事を思っている俺にザックが耳打ちしてきた。
「セレーネの機嫌が悪くなる前に早く行こうぜ」
「ザックにしては珍しくまともな事をいってる」
「なんだよ!?俺だってそんくらい分かるわ!」
「そっか、なら行こうか」
そうして俺は鼻歌を歌っているセレーネに声をかけて率先して前を歩く。後ろから
「何だよ、張り合いないな~」
とザックの声が聞こえるがスルー。お前の相手は疲れる、それが本音だ。セレーネはいつも相手していて凄いと思ってしまった。
そうして俺達は目と鼻の先にある王都の門にたどり着いた。
門には兵士がいて、俺達の姿をみるや否や近づいて話しかけてきた。
「君達、王都の学校の受験生かな?」
俺が答えた。
「ええ、そうです。明日の受験に向けて、今日やってきました」
「そうかい。今年の受験生のレベルはとても高いらしいよ?」
「え?そうなんですか?」
せっかく乗合馬車で会った男性に勇気をもらったのに、不安になってきた。
「ああ、今年はトルステイン王国の第二王子様を筆頭に沢山の貴族の子息や子女が受験するらしい。隣国からの受験生も相変わらず多いらしいよ?貴族の子息や子女は付きっきりで剣や魔法を教えてもらう教師がいるからね。レベルは高いよ」
「そんなの聞いてねえ!?俺達やばくねえか?」
俺の横でそう叫んだのはザックだった。
「 ああ、やばいな……」
無茶苦茶不安になってきた。
「まあ、全力で頑張ったら良いんだ。Sランクの学校は凄いけど、それが全てだと思ったらいけないよ?どんな学校でも学ぶものは沢山あるんだからね。入るまでも大変だけど、入った後にどれだけ努力するかも大切なんだ。僕の出身はDランクの学校だけど努力した人は王国の官僚になったり、騎士団に所属したりしているよ?ちなみに僕も騎士団の一員だ!」
そうして兵士の方は何やら右手を顔に当てて決めポーズをとっている。俺達にはそれがとてもカッコよく見えた。
「「「カッコいい!!!」」」
「やっと表情が明るくなったね。その調子で試験に臨めばきっと大丈夫さ!」
兵士はニコニコと笑いながら俺達を励ましてくれた。
「長々と引き止めてしまって悪かったね。王都はとても広いから道に迷わないようにね!」
「「「もちろんです!」」」
そうして俺達は兵士に門を通してもらいようやく王都の中に入ることができた。
門を抜けた先の景色は俺達3人の目に映ったのはどれも本の中でしか見たことのない新鮮な景色だった。
目の前の広場には屋台が沢山並んでおり、いい匂いが漂っている。見える範囲で家はほとんど二階建てで俺達の村では考えられない光景だ。時計台もある。遠くの方にかすかに見えるのが王城だろう。あそこが王都の中心だから王都がどれほど大きいのかが想像できる。
「「「凄い!!!」」」
俺達の声が重なる。
ザックは目の前の屋台の匂いに釣られたのか言い出した。
「なあ、ちょうどお昼だし、食べねえか?」
俺とセレーネは顔を見合わせた後、ザックを見てうなづく。
全会一致で可決された。
俺達は屋台でお腹いっぱい食べた後、王都を気が済むまで散策した。ほとんどセレーネについていっただけなのだが……。
夕方になったので、通りすがりの王都の方におすすめの宿を教えてもらい向かった。
宿はラッキーなことに空き部屋があり、3部屋取った。
そうして俺達3人は宿で夕食を食べた後、明日の入学試験に向けて思い思いの夜を過ごした。
◇
時は遡りノルン達が王都の門をくぐった頃、時計台から1人の人物が彼らを見ていた。
「やっと見つけた、ノルン=ヘルリッヒ。君をずっと待っていたよ」
_______________________
一人の人物とはいったい?
そしてなぜ時計台からノルンの姿が見えたのでしょうか?
乞うご期待!!!
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