12

 恭子さんが犯人側の人間で、黒神イソラもその仲間だった。

 氷見さんが殺され、七海も死んだ。

 残されたわたしは、二人のうち一人を選んでカップルにならなければ助からない。

 そんなの無理だ、絶対にありえない。相手の性別以前に、こんなヤツらと恋人同士になんてなりたくもない!


「えーっ、だってぇ……せっかく準備したのに、中止なんてありえないじゃないの」

「ハァァ……だからってさぁ、強行した結果がコレじゃ意味がないの! ねえ、わかってる!?」

「ねえ、そんなに怒らないでよ」

「怒るに決まってんだろ! 歯まで抜かれたのに失敗ってなんだよ、クソババア! テメェだけキスしてんじゃねぇーよ!」

「あっ……やっぱり妬いてたのね? うふふ」

「だから妬いてねぇよ! 不公平だって怒ってんだよ!」


 二匹の悪魔が揉めている。

 どうせなら、このまま殺し合いを始めてくれても構わないけれど、そうなった場合、わたしは勝者と強制的に結ばれる道しか助かる手段はないのだろうか?


 ううん、望みはひとつだけある。


 恭子さんのスマホだ。

 なんとかスマホを奪えれば、もしかすると状況が変わるかもしれない。それしかもう思いつかなかった。

 不満を爆発させた黒神イソラを、恭子さんはマイペースであしらい続けている。この隙にスマホを盗まなきゃ。相手は二人だ、失敗すればすぐに捕まって殺されてしまう。

 でも、スマホはいまどこに?

 安心しきっていて、まだ七海の手から回収していないのかな?


 もしそうなら、好都合だ。

 チャンスは一度きり……やるなら……いましかない!


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