おまけ3オルタナティヴって何ですか、ユーリ先生4
「つまりね。人格が入れ替わるほど、暗黒――ってこれも言い方に語弊があるんだけど、とにかくそういう属性が反転するのがオルタ化なの」
ふーん。
それは一般的に言われる、フォースのダークサイドに堕ちる的な話なのかな。
「というより、性質が変わると言った方が正しいわね。別に悪人になると決まってるワケじゃないもの」
ああ、そうか。
光だけが正しくて、闇は人間にとって恐れるべきもの、ってそういう価値観が既に偏見っていう、その手の話ね。
「闇にも有効な活用法とか、その属性の人も決して悪ではないってことで、いいのかな」
「そう。だって、それを言ったら魔女であるわたしも同じ様なものだしね」
――良き魔女と悪い魔女。
どこで線引きするのかは曖昧だし、別にしなくてもいいはず。
ただ人間の敵かどうか、それだけの基準なのかも。
敵だから即、悪とは限らない。
「でもそうなると、地球からは供給されないから、ソラの場合はなんか異界とかから魔力をパスとして繋いで調達してそうなのよ」
え? それってそういう話だったのか。私は別に今のままでいるつもりだけど。
「例えばのシミュレーションよ。妄想といってもいいかな。だから、魔眼が暴走するくらいの強力なアウトサイダーだけど、冷静なオルタ・イーヴル・アイズってところよね」
何だか、言葉が一人歩きしてるようで、実感はまるでない。
まぁ、妄想というなら聞きましょうか。
「で、ね。代わりに魔眼封じの眼帯の様なのをしてると思うの。凄くクールで冷徹でさ。仕事はキチンとこなすけど、人情味に薄いっていうか」
どんな目で私を見ているのかしら。
オルタだから逆転してるってことは、逆に好意的に見てくれてる?
っていうか、そもそもオルタナティヴっていう言葉が、代案とか代替とか、二者択一の中での違う選択肢って元々の意味だっけ。
「そして、強力な魔眼は世界すら歪ませる。今のソラが十の力を発揮出来てたとしたら、異界から濃い魔力を最大に補給しているそれは、百以上の威力を発揮する」
つまり、と人差し指を突き立てて、実に生き生きして楽しそうなのが何よりだ。
「空間すら崩壊させて、恐らく存在であるなら、宇宙でも神でも内部崩壊させられる。物理的に生き物じゃなくても破壊出来るかも」
「それってもうビーム放つ怪獣みたいに危ないじゃないの。制御してそれを任意でやれるって話よね?」
「そうよ。それくらい本来の魔眼は恐ろしいんだから。ソラ・オルタなら多分、今鍛えてる空間認識魔術を最大限に駆使して、あらゆる角度からそのイーヴル・アイズを使って、どんな敵でもやっつけちゃうわよ」
でも、それは可能性の話であって、私じゃないわよね。
「ま、そういうこと。で、オルタ現象っていうのはね」
これが怪異譚みたいなもので、と少し眉を顰めて話を続ける。
「その人間の可能性を抽出した世界が、何かの折にその反転可能性を現界させるのよ。まるで思考実験だけのマクスウェルの悪魔を実際に作るみたいに」
「・・・・・・変な例え方ね。ってことは、ホントに滅多にそんなのは生まれないって、そう言いたいのかしら」
うん、と首肯するユーリ。やはり少しこっちは深刻そうだ。
「そうね。でも何らかの儀式を使ってそれをやろうとした魔術師もいるらしいし、異界からそれが出現するパターンもあるのよ。異界は本当に詳細が全く分かっていない、全くの未知の世界だから」
そりゃあ普通は行ったこともないだろうしねぇ。
神隠しに遭った人間も、あまり記憶にないって聞くし。
「それは妖精に盗まれる子供の話ね」
いや、私は天狗とかを想定してたんだけどな。
まぁ、それはいいや。
「とにかく、その別様態こそがオルタ現象であって、どんな聖人でも暗い部分は内部に抱えているものだから、その部分を抽出した、恐らくこの星や宇宙に対するアンチテーゼなのかどうかは分からないけど、いずれにしてもそんな何らかの意味を伴って生まれて来る現象なの」
・・・・・・フーム。そりゃあ聖人君子だって、完璧で公明正大って訳にはいかないか。
でも、それはホントに何なんだろう。ちゃんと分からないことばかりだ。
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