おまけ1改造人間マチルダ・マザー6
「・・・・・・心配せずとも、私達はどちらも今はそうやって準備して待機しているよう命じられている身です。ですので、直近で処分が下ることもそうないと判断します」
お互い辛い立場よね。そう私は言う。
「結局、NPGが何かも私達には知らされてないですし、この虚実機関って色々謎ですよね。そんなのでよく組織の支配体制が維持出来てますよね?」
疑問を発する私に車輪さんは軽く微笑んでから、現状を適確に整理してくれる。
「フフ。空さんがそう思うのも無理はないですね。ですが、キチンと指令は一定期間内に送られたり、貴重な情報は伝令係が配置されたりと、意外に細かい雑務もあるのですよ。勿論、NPGのオペレーターが無機質な機械なのか、はたまた誰かのそういう能力なのかは、末端の構成員には知らされないのも事実です。ですが、機関は確かに世界を守護する役割を担っています。時には空さんの報告にあった教会の人間や、様々な魔やSPと対立することはあるとしても、です」
うん。そうだね。
先生や要さんの姿を見て来ていたから、私にはとても機関が悪玉には見えないのだもの。車輪さんだってそう。
「私がどんな改造人間か、空さんはまだあまりご存知ないのでそう言えるのかもしれませんよ? まぁ、私自身は大した改造人間じゃありません。バリバリの戦闘タイプには恐らく軽く負けるでしょう。勿論、そうならない為のやりようは幾らでもありますがね」
むむむ。そういわれると気になるなぁ。結局、先生もどんな切り札を隠してるのかは教えてくれないままだったし。
「フフ。そう思うなら、少し推測してみるなり、分析してみることですね。模擬訓練もその内予定していますから。まぁ、能力や特質はそうそう他人にペラペラと明かすものではないですよ。何故か分かりますか?」
え、それってつまり。
「――そう。能力が即、弱点に直結する場合が多々あるからです。対策が分かっている能力者ほど扱いやすいものはありません。尤も遺憾なことに、中にはそんな風に詳細が分かっていても、どんな対策も物ともしない規格外の強者もいるにはいるのですがね」
ははあ。それが要さんとかその辺りの人なんだろうね。
私には到底到達出来ない世界だから、あまり参考にはならないわよ。
「――しかし、空さんに魔力供給されている数値を測っていたんですが、本当に桁違いの供給がありますよ。元の空さんの値と比べたら、本当に貴方が情けなくなってしまうほどに」
うーむ。それは言わないで。
そりゃあ星の魔女だからねぇ。星からの供給を頂いてる訳になるのかな。
・・・・・・いつか地球に怒られたりしないんだろうか。
「面白いことを言いますね。しかし、星の魔女とはいえ、貴方が星や世界への悪玉としての、反転可能性に堕ちてしまえば、供給は絶たれるでしょう。今の貴方なら、よほどの憎悪に呑み込まれない限り、今の善性のままでいられるでしょうが。それこそその原理の使者がいうように、オプティミズムに溢れた様な」
ははあ。そんな軽い能天気娘みたいに皆言いますよね。私だって真剣に色々考えてるんだぞ?
「それは理解しています。貴方はどちらかというと、常に即座の判断はせずに判断保留出来る方なのでしょう。それだからこそ、突発的な事態にも慌てず、素直に最善を行える」
「慌ててる気もしますけどね。でも確かにどうしようなく絶望して、対処を考えられなくなるのは、あの魔眼が暴走してた時以外にはそうないですかね」
「――フム。魔眼が安定と不安定の指標ですか。貴方はだからノーブル・ウィッチに選ばれたのかもしれません。フフ。ある意味で大物ですよ」
そんな褒められ方をして、ちょっとくすぐったいどころか、困惑してしまう私。
「大物だなんて要さんじゃないんですし、やめて下さいよ。私は適切に判断出来るようには、必死に努力してるつもりですよ」
「ええ。それが恐らく、いずれやってくるかもしれないその時に、冷静に味方を、いえ自分自身すらも犠牲にして、部隊の被害を最小限に止められる資質がある、そんなお方である証拠だと私は思います」
冷静に被害を最小限に? それって切り捨てることが出来るって話よね。そんなこと、ホントに私に出来るかなぁ。
「そうはいっても、そこで全てを犠牲にしないで、任務を達成する術すら考えついてしまうのが空さんの素質なのかもしれませんが。いずれにせよ、私もいい所に配備されたものです」
照れていいのか、何と言っていいのかホントに困る言葉を投げかける人だ。
これで到って真面目なんだから。
「さて、食事が終わりましたら、後片付けは後ほどさせて頂きますので。空さんは資料に目を通しておいて貰えれば」
資料か。結構ちゃんと授業みたいなこともしながら、ステップアップさせてくれてるのもあって、車輪さんはいい教師なのだろう。
それに情報のまとめ方も上手だし、先生に習ったこと以上に、色々な魔術の応用や戦闘技術について修練していくのに必要な知識を授けてくれるんだもの。
その車輪さんの期待に応えて、いい部隊長だか何だか知らないけど、そんな器になれるように努力しますかね。
――まったく、そんな期待も絶望も全然ないけれど、普通の女子高生としてのノンビリした日常は、思えば遠くなりにけり、って感じよね。
これは歩辺りに、詮索は全然されない代わりに、ハードワークを悟られて小言の一つは言われそうね。覚悟しておこう。
それにしても、絶対食事周りの雑務は、自分が担うのを譲らないのは、どこまでも車輪さんってば頑ななのが、少し面白いかも。
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