第7章魔眼の真価と吸血鬼の戦い二回戦。または儀式でドキドキ?空とユーリの繋がりは更に濃密に2
「そう言えば、ソラ。眠りにつく時は、貴方の魔眼は大丈夫なの? 今まで暴走した様子はないみたいだけど」
観相の為の準備をしていたら、ユーリがそう話しかけて来る。
座布団を一つ私は敷く。赤い色の普通のサイズ。
「ああ、それね。――うん。なんか先生が私の部屋には特別な魔眼封じの術式を展開させてくれてるんだってさ」
「へー。結界みたいなモノかしら。でも、とすると――
「ええ。この家以外じゃちゃんと寝られないんじゃないかな。だから遠征したりもしなかったんだよ、きっと。先生がどこかに行ってもずっとお留守番だったしね。あ、でもユーリが上手くやってくれたら、ちょっとは楽になるのかしら」
「そう、ね」
心なしか、ユーリの顔が今赤くなった気がするんだけど。それだけじゃなく、少し暗い感じで目も逸らしたような。? どういう心境の変化か、こちらにはとんと分からないわね。
式神の紙を傍らに置いて、座禅を組む姿勢になる。これは割と慣れていないと辛いかもしれない。
「良し。じゃあ、集中しないと」
「あ。ちょっと。意識の中に入って共有出来るように、額に手を置かせてね」
有無を言わせずおでこに手を当てる、無邪気なユーリなのだった。・・・・・・凄く集中しにくいんだけど。
「こういう気が分散しやすい状況も想定しておく必要があるわ。一緒に何かをやる時なんかとかね」
うーむ。一理あるから言い返せない。でも確かに疲労状態とか、敵の攻撃に対応している時の為にはなるか。
「―――――。観相、セット。――覚醒」
意識を研ぎ澄ませていく。不思議とそういう状態になると、ユーリの手が自然にある物として、何も感じないのと同じになる。
世界が無くなって、私の中に私の意識が潜っていく感覚。
そこに今日はどうやら一人観客がいるらしい。それも意識の片隅に入れながら、私は魔力炉の感覚を感じ取っていく。
炉心が燃えている様子。
生命の燃焼というより、その人間の魂の矢印のカタチ。
次に式神も想定していく。
それはこの間の弓を放つのに加えて、貰った物を全て置いているので、槍使いみたいなのがもう一体と、藁人形を象った様な無機質なのが一体。
槍使いは、別の武器として薙刀みたいなのも出せるらしい。そう頭の中に情報が入って来る。
これは長年修行して来たから、物の魔術的情報を読み取れるまでになったけど、ただこれくらいしか出来ないのだから、やはり私が三流なのは間違いない。
もう一つのは、どうやら格闘術で戦うようなタイプだった。
素早く動き、そのどこにも目鼻口がないのに、ちゃんと認識しているように、俊敏に対象を正確に攻撃出来るかのようだ。
これら三体の内二体は、全てマスクというのか、仮面というのか、そんな装飾のを付けていた。
・・・・・・先生の趣味なのかな?
藁の人形めいたのだけ、のっぺらぼうのままだ。
それは自動で対応するように造られているようだけど、こちらの意識も働きかけられるみたいだから、防御に回って欲しい時とかには、意識を集中させて動かして来るという使い方でいいみたい。
「あら。呆気なく操作が出来るのね。流石はキミエの弟子って所かしら」
「この程度じゃまだまだだよ」
――そう。先生は、どうやらこの式神の視点のヴィジョンもチェックして、複数の視点の情報を眺めながら、多角的に戦ったりも出来ると言っていたかしら。
そうすると、どこからの攻撃も反応出来る訳だし、こちらも相手の死角や守りが薄い部分を突きやすい。
「魔眼は――――。うん。〝疾走〟は自然に重い感じもなくいけるわね」
その元々の〝崩壊〟からの派生の魔眼を、まずは使っていく。
走ることを徹底して、動きをスムーズにする点を重視していく。
魔眼〝疾走〟はそんな風に、自分の中の素早さのイメージをモノのカタチにしなくてはならないのだから、自分の中に速さという概念を強固に持っている必要がある。
そして〝崩壊〟を使うのは少し怖い。だって、世界が全然違うモノになってしまった、あの時の予感がまだするから。
「それは多分、世界に影響を与える魔眼だからだわ。自分に効果をもたらすのではなく、外部の自然を能力で歪めてしまう。突き詰めると、空間すら貴方の魔眼は壊しかねない」
「――つまり。この魔眼は扱いには細心の注意がいるって訳ね。そして、どんな風に壊してしまうのか、そのイメージもあればいいのよね」
「そう。この前のグルッと反転していって、内側から破滅させるようなの、あれがかなり精神へのダメージもあるでしょうけど。最初に発現した在り方だし、しっくり来るんじゃないかしら」
うん。そう。あの時のココロの中のモヤモヤは恐ろしかった。
まるで世界の中に居場所がない、だから世界の方を変えてしまえ。そんな感覚。
でもそうやって、相手を回転させるみたいなイメージで、相手の内部に入り込んでいく感じ。
そこから粉々にというより、風船が内部から破裂するとでも形容すればいいかしら。
それが私の魔眼〝崩壊〟なのかもしれないから。
「まぁ、わたしはちょっとそのやり方は、知ってる嫌な子の能力に似てるから、好きになれるかは別なんだけど」
何かユーリが言った。独り言だったのだろうか。凄くボソッと言って、こっちには聞こえないように言ったんだろうけど、一応聞こえちゃってるんですけど。
――――それにしても。なんだかんだでユーリの他人との関係は、全然私って知らないなぁ。
もっとユーリに付き添って回って、色々な人に会って、色んな場所を巡るのが推奨されてるのかも。
と、と。
集中力を乱さないよう気をつけないと。
魔眼で見た対象を壊しながら、自分を速めて、式神をコントロールする。
かなり荒技だし、先生に比べたら、かなり大雑把にしか出来ないけど、私としては上等じゃないかな。
魔力炉は小さいし、これを神経と接続しているみたいに、集中して魔力を発動させるのは、三流の私にはかなり精神力を使うくらいしんどいのだけど。
一応、これくらいで多少は戦いになるだろうと思う。ユーリとは大違いなのは当たり前として。
「――ふう。こんな短時間でもうこんなに消耗するのよ。私ってやっぱり弱いわよね」
首を振って真剣に返答してくれるユーリ。そんなことないって口調で。
「ソラくらいやれれば、実際虚実機関でもちゃんと戦力になるわよ。改造人間と同じように戦うみたいにしてるんだから。まぁ、SPの特殊さにはついて行けないだろうから、そういう任務は極力避けることね」
ふむ。SP――か。そんなのを探索する任務ばかりやらされてる改造人間もいるらしいけど、果たしてそんなのは私に回って来るんだろうか。
「うん。まぁ、今考えてもしょうがないわよね。じゃあ、もうちょっとしたらお昼にしよっか。夜に備えないとね」
「ええ。わたしも出来る範囲のことはしてみるつもりよ。ソラと協力してるんだから、二人とも生き残れるのが目標じゃないと。後、ソラのご飯昨日も美味しかったから、楽しみにしてる」
不意打ち。こんな言葉を貰うと、やり甲斐もあるってものだ。
それに、そうなのだ。私達どちらも欠けないでいること。かの災厄を未然に防ぐこと。
困難なミッションだけど、これが私の機関での初仕事だ。
――先生に褒めて貰えないのは、ちょっと残念だな。
そう、少し感傷的になりそうだけど、それもすぐに途絶える。
私はやはりどこかに欠落があるかのように見えると言われた。
それだからだろうか。そのままそれを受け入れて、凪の状態みたいに、自然体に戻るのも早かったのだった。
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