第7章魔眼の真価と吸血鬼の戦い二回戦。または儀式でドキドキ?空とユーリの繋がりは更に濃密に
第7章魔眼の真価と吸血鬼の戦い二回戦。または儀式でドキドキ?空とユーリの繋がりは更に濃密に1
またしても、ですよ。
私が起床した時には、ユーリは既に起きていて、もう布団の中にはいなかった。
――少し残念。
でも残り香はまだある気がして、少しドキドキしながら、その辺に体をモゾモゾさせてしまう。
そして、そんな風に何故かユーリを恋しく思いながら、気もそぞろに布団を後にしてリビングへ向かう。
そういえば、先生は何か哲学書を机に上に置いていたのを、昨日寝る前に先生の部屋にちょっと入った時、見てしまった。
先生はあれを読み終えていたのだろうか。
どうしてもそんなどうでもいい疑問が湧いて来てしまって、まだ先生のいないことに実感が今一つ持てないでいる。
恐らく、未だに緊張状態にいるからだろうとも思うけど、私自身随分麻痺した精神らしいから、平静に過ごしているんだろうか。
あまり自分のことは分からないのが本音なんだけど。
扉を開けてユーリの姿を見つけると、私は少し明るい顔をしていたかもしれない。
何だか無性にユーリを見ていると嬉しいというのか、気分が高揚してしまう。
「あら。おはよう、ソラ。今、紅茶を容れてあげるわ。キミエのやってるを見てて、この家の物の配置は大体覚えたから」
勝手知ったる我が家のように、もうユーリは優雅にティータイム中だった。
「ソラが寝てる間にね、一度着替えをホテルに取りに戻ったのよ。洗濯もしないといけないし」
ああ。そっか。私の服を流石に借りるって訳にもいかないだろうしね。小っちゃいのもあって、ユーリが着たら伸びちゃいそうだ。
ユーリがお湯を沸かして、紅茶を容れる準備をしてくれている間、私はとりあえず顔を洗って、朝食の用意をする。
といっても、いつも私はパンだ。買い置きのスナックパンなんかが、今はなくなっているのもあって、一応食パンを焼くことにしようかな。
そういえば、ユーリは古い時代からの魔女だとは言っても、一応現代の生活には慣れているみたい。家電製品も難なく使えているようだし。
・・・・・・それにしても。ユーリがなんだかこうしていると、凄く年上のお姉さんに見える。
やだ。
先生より大人なんだから当然なのにも係わらず、先生には感じないお姉さん性を私ったらユーリに見出してる・・・・・・!
テーブルに座りながら、とりあえず今日の予定を私は言っておく。
「忘れてたけど、今日は先生に以前から教わってた、観相トレーニングをやろうと思うのよ」
「カンソー・・・・・・? えっと、イメージトレーニングみたいなモノかしら?」
「そうそう。それで式神の使い方とか、魔眼のスムーズな行使の仕方を、魔力生成の過程の把握と一緒にやっておこうと思ってね。実戦続きで、こういうトレーニングをやるのを忘れてたなって思うの」
ホントにそうである。
これは結構前から少しずつやるように言われているので、式神という新たな道具もあるんだし、一度やってみるのはいいんじゃないかと思う訳よ。
「それはいいかもしれないわ。精神を集中させて、統一的な魔力の流れを造るのは、魔眼のコントロールにもいいかもしれない」
ああ、魔なる作用で駆動しているんだものね、魔眼って。
「ええ。ただソラの魔力炉はとても小さいから、一度に行使出来る術式は限定的なんでしょうけど」
「あー、そうなのよね。私には魔術師としての才能はないみたい。だから機関でも予備として、今まで戦闘に駆り出されることもなかったんだから」
うん、それは分かっていたことだ。
先生の恩情にいつまでも頼っていられないんだから、今は覚悟が必要だけど、自分が大したことなくて、どんなに頑張ってもある程度までしかやれないのも理解している。
そう。分相応は弁えておかなくっちゃ。
「その代わりさ、集中力は凄いって言われたんだよ、私。だから魔眼の適性はあるのよ」
「そうも言えるかもしれないわね。魔眼ってやっぱり精神が摩耗しないように、かなりの精神力が必要だから。それこそ日本の、なんだったかしら、えーとあのジャパニーズ僧侶がやるお祈り、じゃない特殊なアレ。あれをするのがいいとかなんとか」
日本の僧侶がやるアレ? もしかして。
「それって禅に於ける座禅のこと? まぁ、ああ言うのは魔術師もやるといいって言うわよね。そこで魔力の流れをちゃんと体中に通して、研ぎ澄ませていくのよね」
「そう。ゼン、ザゼンよ。やっぱり日本のことは日本人に聞くのが一番ね。そういう取り組みも、キミエは取り入れてたんだ。へー。流石、ジャパニーズ・メイガスよね。土地の修行法をちゃんと取り入れてるのね!」
うん。まぁ、厳密に言うなら、道元なんかは禅宗という宗派はない、とか言っていて、禅とはただ座ることだとか言ってるから、厳密にはそんな魔術訓練に取り入れるなんてのは、邪道なんだと思うけどさ。
「とりあえず、夜には探索はするんでしょ。ちょっとでも魔術式の起動を遅らせないといけないんでしょうし」
こくりと頷くユーリ。それで行くようだ。
「ええ。またシン・クライムもちょっかい出してくるでしょうけど、ちょっと気合い入れて叩いておかないとね。そうじゃないと、一気に全開の彼の固有魔術式とやり合ったら厳しいもの」
うーん。そっか。相手にもこっちは一筋縄じゃいかない所を見せて、相手の持っている戦力を少しでも削いでおいた方が、次に決戦になった時が楽か。
どうも焼け石に水みたいな気分ではあるけれど。
でも一応、今晩はその同化させる儀式もするそうなので、そうしたら私はもうちょっと戦力として期待出来るようになりそうだし、だから今晩はとりあえず、この局面を無事に乗り切れるようにしたいよね。
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