すっかり、あやかしに慣れたようだな
勝ったのは、壱花だった。
「レアキャラですかね?
もうちょっと見とけばよかった」
と派手な着物をまとったあやかし猫の姿を思い出しながら、壱花は呟く。
「すっかり、あやかしに慣れたようだな」
と倫太郎が言った。
「そりゃ、何度も同じコマを行ったり来たりして、何体も同じ妖怪に背後に並ばれ、店中みっしりに正座されたら、さすがに慣れますよ。
ところで、このすごろくって妖怪が遊ぶんですかね?」
と言って、
「知るか」
と言われる。
「でも、毎日こんなことしてたら疲れますよね、社長」
「いや、毎日、こんな阿呆なことはしてないが……。
でもまあ、仕事の後だから疲れるな」
と倫太郎は言う。
「ちょっぴり小賢しいことを小生意気に言っただけで、これはひどいですよね」
「……お前、微妙に俺をディスってるぞ」
と倫太郎は言ったあとで、
「まあ、あんなこと言わなければ、こんなことにはならなかったかなと思いはする。
だから、ビジネスの世界でも余計なところでは出しゃばらないよう気をつけるようになったし。
よかったかなと思うようにしている」
と突然のよかった探しをはじめた。
壱花は思わず、
「え? 出しゃばらない?」
誰の話だと訊き返してしまったが。
でもまあ、確かにこの生活が何年も続くと疲れるよな、と思う。
それでなくとも、社長って激務だし。
一度だけ、他の秘書の人たちがインフルエンザで倒れてしまったので、壱花が社長に帯同させられたことがあった。
車での移動中、うとうととし始めた倫太郎が少し、壱花の肩に寄りかかる感じになった。
あのときもさっきと同じ香りがしたっけな……。
「社長」
「なんだ?」
「……わたしがここに残りますよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます