気まずい朝
その日は、太陽の日差しが頬に当たって意識が覚醒する。
眠り眼を擦りながらも、ソロソロと筋肉痛の足を動かし、洗面台まで到着する。
顔を洗い、歯磨きを済ます。すると、水音で起きたのか、聖音がやってきた。
聖音も朝に弱いのか眼を擦りながら、
「おはよー宮藤さん」
昨日の凛とした態度は何処かへ消え、ちゃっかり欠伸なんかもしちゃっている。張り詰めていた緊張が解けた、そんな風に感じた。
「おはよう。よく眠れたか?」
「……ん」
コクリと頷き、どこか物欲しそうな顔で洗面台を凝視する聖音。
その視線の意味合いに気づき、あることに気づく。
「あ、すまん。歯ブラシ一本しかない」
「……仕方ないなぁ」
そう言いつつ、少々躊躇いながらも私の歯ブラシを手に取り、口に入れる聖音。自分の歯ブラシを誰かが使うというのは、その……何か背徳的な気分になる。
次はあの歯ブラシが私の口に……。そう考えると、顔が火照ってきた。
鏡に視線をやると、映っていたのは羞恥で顔が紅く染まった聖音の顔。
もしかすると、私は自分の歯ブラシを他人に使わせるド変態だと誤解されてないか?
私の気持ちを汲み取ってか、使い終わった歯ブラシはポキリと折られる。
「……変態」
そうポツリと言い捨て、聖音は洗面所を後にしてしまう。
「なっ……!」
この狼狽こそ、事実だと物語っているのでは?
こうして、同居生活は一日目から気まずい空気の中始まった。
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