SYETEM:A〜壊れた世界の中心で〜

第1章『片翼の少女は救恤に怯える』

第1話 『プロローグ』

 人間たちは、常に自分たちが上であると信じて止まない。

 社会の地位、人間関係────そして、世界のヒエラルキーでさえも。

 自分たちは消費する者だ、と。消費される側の者の気持ちなど考えたことすらもなく、知ったこっちゃない、と自分たちが住みやすいように環境を改変し、そして自分たち以外の在り処を奪っていく。

 人間様が一番だ。俺たちの都合に世界は従ってくれる────と。

 確かに人間が頂点に居たかもしれない。間違ったことは言ってなかったかもしれない。ただ、あの日が来るまでは。

 今から数年前。人間たちが年を数えることを諦めてしまった今、何年前か、なんて概念は今更気にすることないモノだが。確かにあの日、人間の立場というものは暴落した。

 黄金こがね色に強く輝く空と、ソレをバックに現れた、謎の生命体。後に、人間たちの間で『天使』と呼ばれる生物たちは、よく通る、透き通った、鈴の音色のような声で言った。


「世界を蝕む、愚かな人間たちに告げます。貴方たちの世界はもう終わりです」


 白く、神々しいまでもの翼をはためかせながら、天使たちは地面に佇む人間たちへ滑空。ソレを認識した途端、一方的な、虐殺とも取れる殲滅が始まった。

 曰く、それは神の意思。

 曰く、それは生物の間引き。

 曰く、それは天罰だと。

 簡単に言ってしまえば、人間たちは些か調子に乗りすぎた。数多の生物をその手で殺し、喰らい、そして自分たちの都合でその住処を破壊していく。

 世界の悲鳴を聞いていたはずだ。それでも止まることなく、ずっと、何十年も、何百年も。

 そんな生活を続けていれば、神様が────世界が激怒するのも当たり前だ。そんななんてことないコトに気付くのが、自分たちが〝消費される側〟になってからだなんて、愚かな話だ。

 人口は瞬く間に減少していく。それでもしぶとく、人間たちが生き残れたのは天使に対抗するための手段が確立したからだ。

 人間が他の生物と違う点。生きようとする意思の強さと、圧倒的すぎるまでの知識量。

 それらが自分たちの生存のためにフル稼働し、いくつもの技術を生み出した。

 天使の肉体の一部を自身に移植し、天使たちと同等の力を発揮する改造兵。

 同じく、天使の肉体の一部を使った弾丸や武器。

 そして、その武器や改造兵を使って戦い、人間の世界を取り戻すための機動部隊。


「部隊長!!」


 俺はその、極東第一支部の、落ちこぼれ部隊長だ。

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