決闘にて溝は深くへ 舌戦編

「これよりビートとリドルによる模擬決闘訓練を執り行う、双方前へ」


 一方的な決闘布告を突きつけられた翌日、中天の日にさらされながら練兵場でビートと向かい合う。





 手袋を叩きつけられたあと詳細の確認のため

 人形操作魔法の練習を中断しメイと二人して母上の元に確認しにいった。

 それによるとやはりというかビートが表向きは自分より強くなりつつある俺を持ち上げる形で稽古をしたい、何かにつけて逃げるかもしれないため正式な決闘の形にしたというらしい。


 嘆息する母上に思い付いたアイデアを伝えると母上曰く、「思いっきりやっていいわ、むしろギッタギタにしてやりなさい」とのことでこれまでの恨み辛みも込めて徹底的にやってやる。



「お互いに武器は聖剣と肉体、そしてのみだ。

 意識または戦意を喪うか降参する、命に関わると私が判断した場合に決着とする。

 また、反射的に魔法を使ってしまわないよう公平を期すため魔力を感知できる者を数人見届け人とした。

 二人とも恥じぬ戦いを期待する」


 父上が最後に簡単なルールのおさらいをするとわざわざビートがあくまで公平を期すため、実際は自分に有利にするためのシンパをサクラとして仕込んだギャラリーの方へと下がる。


「父上、宜しいでしょうか?リドルに少し話しておきたいことがあるのですが」


「……よかろう」


 許可をとると父上が下がっていくのに合わせてビートが顕現させた聖剣を肩に担ぎながら此方に歩み寄る。




 ビートの聖剣は俺の物と違いちゃんと剣の形をしており、湾曲した大振りの形状から両手剣ツヴァイヘンダーの類いと思われる。




「生意気なんだよ、後妻の子の癖に調子に乗りやがって」


 父上が下がりある程度距離が空いたことでオレにだけ聞こえるような声で話し出す。


(そっちこそムカつくな!……。こっちは採掘具なのにそんな勇者みたいな物を持ちやがって、羨ましい)


 海賊の持つ曲剣カットラスを巨大化させたような形状にビートの属性たる炎をあらすような拵えが刀身に入った形状はいかにも古き良き正統派ロールプレイングの主役、もしくはそれに準じた者が持ちそうな外見であり

 自分の持つ聖剣ツルハシと思わず見比べ思わずため息が出そうになる。


「私がいつ、調子に乗っていると?」


「卑怯にも魔法と聖剣で領内の人気をかき集めているだろう」


 どうやら魔剣発掘の件だけでなく合間合間に領内の土を耕すのを手伝っていたりすることにも文句があるようだ。


「それは単に練習と領内を良くするために使っているだけですよ」


 実際、魔法が目に見えて上達していくのが楽しいから率先して手伝っているが別段媚びている訳ではない。


「オマケに天から授かった聖剣をあんなことに使って……。百歩譲って土木作業に使うのはまぁいい、聖剣のあり方からすると論外だがお前にお似合いな泥臭い仕事だ。

 だが、魔剣を掘り起こしなどはあり得ん。あれは本来穢れたもの、それを偶発的に適性を持つもののみが使うものだ!」


 伝え聞くビートの属性たる炎を体現し、純粋な戦闘に特化した形状の聖剣を突き付けそう言い放つ。


 どうやら兄上様のなかでは魔剣を掘り起こして使うことは道義に反し、天から授かった物のような聖剣を戦う事以外に使用すること自体がそもそも許せないようだった。




「言いたいことはそれだけですか?皆がまだかとがこっちを見ていますよ、そろそろ始めましょう」


 止めどなくグチグチと己の考えを一方的に押し付け、その後も延々終わりそうにない雰囲気を醸し出していたため強引に話をぶち切ると

 眼でビートの背後を指す。


 ちらりと後ろを振り返り、父を含めた自分の仕込んだ手のもの以外が中々始めようとしないビートに白い目で視線を向けていることにようやく気づいたようで「ちっ!」と舌打ちして数歩下がる。


 その様子に話が終わるまで待っていてくれた父上がようやくか、という面持ちで咳払いをひとつすると片手を挙げて高らかに開始を宣言する。


「それでは両者とも言葉は尽くしたようだな、あとは聖剣同士で語るのみ!決闘、はじめっ!!!」


 唄うような父上の向上にお互い叫び声をあげながら剣とスコップを打ち合わせた。

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