第26話「お、おぉ……ありがとう?」

「うわっ、お化け屋敷出ると一気にまぶしくなるな」


 明暗の差で目がチカチカしている俺は、背中の友李ゆりを慎重におろしながら言った。


「はぁ……私疲れちゃったから次の人にバトンタッチするね。残りの時間の分はそのうち埋め合わせするから」


 たしかにあんだけ怖いの我慢してたんだから、気疲きづかれもするか。


「わかった。そんじゃ、あいつらのとこ行くか」


「いや、いいの! 私だけ行って、ここに来るように伝えるから」


 友李は焦った様子で、手をパタパタしながら答えた。……心なしか避けられてるような気がする。俺なんかしたっけ?


「友李、なんか機嫌悪い?」


「いや、やっぱり……なんか恥ずかしくなってきた」


「なにが?」


 友李はモジモジして顔を赤くしてしまった。ホントにどうしたんだ?


「顔、くっつけてたの……やりすぎたかなぁって……」


「あのなぁ、後からそんなこと思うぐらいならやめておけよ」


「だってだって! なんかいけそうな気がして……」


「なにがいけるんだよ?!」


 友李は顔を膨らませて、上目遣いに俺の顔を覗いてきた。


 俺はこんな可愛い幼馴染にはくっしないぞぉ!!


「とりあえず! ここで待っててね。よんでくるから」


「んー、わかった」


 俺が返事をすると、友李はパタパタと小走りで去って行った。


 垣間見えるドSは相変わらずだが、留学から帰ってきて、なんとなく様子がおかしい気がしなくもないが……その辺についてはそのうち聞いてみるか!


***


 しばらく待っていると、結愛ゆあが歩いてきた。


尋斗ひろとさん! お待たせしました」


「おう、全然大丈夫だよ。結愛はどこに行きたいんだ?」


 結愛は手に持っていたパンフレットを広げた。


「ここのゲームセンターに行ってみたいんです! 私の家が経営してるモールだと、ゲームセンターには中々足を運びづらくて」


「そっか。 それじゃ早速行こう」


 一族で経営してるとは言っても色々大変なことがあるんだろうなぁ、なんて思いつつ、俺は結愛の方を見た。


 ん……なんか光ってる?


 よく見てみると、耳のところで何かが輝いている。結愛は耳に穴とか開けてなかったし、イヤリングってやつか?


 それに、うっすらだけど化粧もしてるみたいだ。こんな短時間でよくやったなぁ。


 こういうのって、気付いたら褒めてあげた方がいいんだよな?


「えと、その耳につけてんの似合ってんな。化粧も綺麗、だと思う」


 テンパってしまったが、しっかり伝えられたからよしとしよう! グッジョブ俺!


「尋斗さんと遊ぶのは初めてなので、少し気合を入れてみました!」


 結愛はニコニコしながら答えてくれた。


「でも、そんなに着飾らなくたって、可愛いと俺は思うけどなぁ」


 俺は素直に思ったことを口に出した。そして、その言葉が終わると、何故か結愛が俺の腕にひっついてきた。


「一度振った女の子にそんなこと言うのは反則ですよ? 諦められなくなっちゃうじゃないですか。……でも、そんなとこも私は好きです」


「お、おぉ……ありがとう?」


 うぉ、これ何て反応すればいいんだよ。すげぇ困る!


 というか、一度振った女の子にあーんしてもらったり、デートしたりするのもどうかと思うんだけど!


 まぁ、結愛の大胆さの前では、何を考えたって無駄か……。


 そんなことを思いつつ、リレーデート第2ラウンドが幕を開けたのだった。

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