第16話「……なんなんだ、この言われようは」

 波乱はらんの週末が空けて月曜日。俺はいつも通りの時間に起き、いつも通りの時間に家を出た。


 俺の気に入っている、特に代わり映えのしない1週間が始まる。


 ……まぁ、俺がどう思ってようが、勝手に1週間は始まるのだが、俺の日常に家の前で待ち構えてる美少女なんていたっけか? それも二人。


「おはよう、平良たいらくん。一緒に学校行きましょう。あっ、別に、あなたと一緒がいいってわけじゃなくて、今後の方針について話すためにだからね!」


 さすが咲良さくら。今日も朝からツンツンしてんなぁ。


「あぁ……おはよう。俺、お前に家の場所教えたっけ?」


「調べたのよ。いろいろ手間取ってしまったけど」


「おい、どんな調べ方したんだよ! つかそもそも調べるってなんだよ?!」


 俺は朝から恐怖心でヒヤヒヤしてしまったのだが、咲良の隣にはサディスティックな目つきの黒髪さんが……。


「おはよう尋斗ひろと。あんた彼女いたのね。早く死んで天国でお幸せに」


「おい! 俺には彼女なんていないし、なに死ねとか言ってくれちゃってんの?!」


 あれ、おかしいぞ? 一昨日おとといの、あのしおらしい友李ゆりは幻か?


「お前、一昨日のあれはなんだったん……」


「あんた、それ以上言ったら……わかるわよね?」


「さっせん! 調子こいてましたぁ!」


 やっべ、目が殺害予告してんだけど笑。なにあれ怖い。


「あなた、私がいないうちに尋斗とずいぶん仲良くなったみたいだけど、手を引いたほうがいいわよ。こんなろくでなし」


「……なんなんだ、この言われようは」


「お構いなく。あなたのような横暴な人に忠告されるようなことはありませんから」


「いいぞ、咲良! もっと言ってやれ!」


「うるさい! あなたのために言ってるわけじゃありません! 私自身のためなんだから勘違いしないこと!」


 oh……辛辣しんらつぅ。


「彼は私に対して責任を取らなければなりません! その一環として、一緒に登校をするので、邪魔しないでもらえますか?」


「言うじゃないの。でも、押し倒したり、押し倒されたりする私たちの関係には及ばないんじゃないの?」


「押したおっ……ハレンチな!」


 咲良は衝撃の告白(一部捏造いちぶねつぞう)に顔を赤らめて涙目だし、もう一方の友李は自分で言っておいて恥ずかしくなったのか、これまた顔を赤くしてプルプル震えている。


「おいまて友李! それいろいろと誤解生むし、俺はお前のこと押し倒してないよねぇ?!」


「同じようなもんでしょ? 黙ってないとあの本また持ち出すわよ?」


「やめてください! というか、遅刻するから早く学校行こうぜ」


「それもそうね。友李さん、平良くんは私と行くので、ここでさよならです」


「そっちがいなくなればいいでしょ」


 そう言うと、友李が俺の右手に引っ付いてきた。おぉ、身長の割にはかなり上等なクッションをお持ちで……。


 俺が煩悩ぼんのう全開のところで、さらに咲良もくっついてきた。当たってる、咲良さん当たってますから!


「お前ら、歩きづらいから離れてくんね?」


「「やだ! その女が離れればいい!」」


 この二人は組み合わせちゃならんな……。相性の悪さが半端じゃない。

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