🚇ミステリートレイン
あいる
第1話🚇ミステリートレイン~行先は何処なのか?
🚇登場人物🚇
タケル━━━物語を語る主人公、のんびり屋だけど正義感多少多めの男子
タダシ━━━悪ノリ大好きで3人の中ではイケメンの部類
ヒロト━━━慎重派だけど心優しい
2030年の3月
大学の卒業記念にと友達3人で旅行を計画していた。
貧乏学生だった僕たちが出せるのは3万円が限界で、旅行会社のパンフレットをたくさん持ち寄り、商業施設(イオン)のフードコートでみんなで色々と吟味した。
ここでは無料でお茶も飲めるしWiFiも飛んでいる、貧乏学生の俺たちには最適の場所だった。
「ディズニーランドに行きたいけど交通費だけで消えるよな~さすがにユニバは何度も行ったことあるし、新しく出来た遊園地も入場料高いし、やっぱり温泉かなぁ」
ヒロトはそう言いながら小さなため息をついた。
俺たちは3人とも同じピザ屋でバイトをしていたし、気心も知れた何でも話せる親友だった。
観光するのにだってお金がかかるし、家族に少しはお土産だって買わないといけない。
「沖縄とかもいいかもだけど、これも予算オーバーだよな」
と言いながらタダシはパサリとパンフレットを閉じた。
「これはどうよ~!行き先は着いてからのお楽しみミステリートレインってヤツ」
俺は街中で配られていたそのパンフレットをテーブルに広げた。
【ミステリートレインで向かうのは過去か未来か? 行き先はお楽しみに!!!】
「何か、ヤバくないか?寂れた町のボロい宿とかに連れて行かされるとかないか?あまり有名な旅行会社でもなさそうやし」
ヒロトは心配性で堅実派である。
「そっか?でも面白そうかも?って、思うし俺はそれに賛成やな、まぁ海外ならちょっと不安だけど、日本の中ならどこでもいいし安心だと思うし、俺は良いと思うぞ」そう言うタダシ
とにかく2対1で僕らの卒業旅行はミステリートレインの旅に決定した。
3月の最終の金・土・日の2泊3日に卒業旅行を楽しむ為に金曜日の朝、僕らは大阪梅田に集合した。
集合場所が新大阪ではないことから、在来線を使うということは、そんなに遠くに行くわけではないのだろうと予想は出来る。
添乗員は元々つかないとは知っていたので、もちろん集合場所には誰もいなかった。
予定されていたのは9時過ぎのはずだ。
「これ、騙された訳じゃないよな」
心配性のヒロトが口を開いた途端に
みんなのスマホにLINEメッセージが入った。
【ミステリートレインの旅のしおり】
という書き出しで始まった短いメッセージはこう綴られていた。
◆この旅はグループ毎に行動してください。
◆この旅には報酬が出ることがあります。既に振り込まれた旅の料金が返還され、賞金が出ることもあります。その金額は追って報告させていただきます。(但し条件があります)
◆まず初めに9時12分発の列車にお乗りください。
自由席ですのでどこに座って頂いても構いません。
列車の名前は『2020』です。
到着された頃にまたご連絡いたします。
どうぞ楽しい旅をお楽しみください。
「何か、面白そうやな~」とタダシ
「そうか?不親切じゃないか?」
少し慎重派のヒロトは顔をしかめてみせた。
「まぁとにかく、楽しんでみるか!」
駅のホームに着くと古びた電車が僕たちを迎えてくれた。
今まで見たこともない電車だった。
深緑の車体に白のラインのレトロな列車、そして何故か行き先は書いていなかった。
とにかく9時12分発の列車はそれだけだったので僕たちは飛び乗った。
飛び乗ったは良いが、乗客は僕ら3人だけだった。
各所から参加するのだろうか?
とりあえず4人がけのボックス席に座って発車する時間を待った。
前日はアルバイトの最終日で閉店後の店で送別会を開いてもらい帰宅したので、みんな揃って寝不足だったことと心地よい揺れにいつの間にか夢の中に入って行った。
何時間経ったのかわからないけれど。
到着を知らせるメロディが流れ、寝ぼけながら駅に降り立った。
スマホの画面には12時05分と表示されていた。
それぞれ荷物を持ってその駅に降り立った。
周りを見回して見るとさっきと同じ駅のホームに立っていることに気がついた。【大阪梅田】
「何だよ、やっぱり騙されてんのか?」
ヒロトが言ったと同時くらいにLINEに一斉送信されたメッセージが届いた。
【目的地に到着致しました】
お疲れ様です、ここが今回の旅の目的地です。
まず初めに宿泊先のホテルへ向かい、部屋にお入りください。
フロントでミステリートレインと言って貰うと部屋の鍵を渡されます。
駅構内に併設されたホテルグランヴィア大阪へお越しください。
訳のわからないことになってきたと3人は顔を見合わせた。
「ホンマにわけわからんな~」
そう言いながらも何故か楽しそうな表情のタダシ
「グランヴィアは大阪でも高級なホテルやし、宿泊するだけでも元は取れそうやな~」
その言葉に俺は頷いた。
「騙されたおもて行ってみるんもオモロいかもしれへんな」
俺とタダシはリュック、ヒロトはボストンバッグを持ってホテルへと向かった。ヒロトはもちろん不満気な顔をしながら歩き出した。
周りを見回すと違和感しか無かった。昼の12時なのに駅構内には歩く人もまばらで、皆こぞってマスクを付けて歩いていた。
数分後にホテルに到着した僕たちはフロントへ向かい「ミステリートレイン」ですと伝えた。
「ようこそお待ちしておりました。」
髪を七三に分けて制服を着こなしているホテルマンも、もちろんマスクはしているものの、にこやかに微笑みながらお部屋へご案内致しますと言いエレベーターへと案内してくれた。
押された階は27階
確か最上階のはずだ、マジか?
スイートルームやんかと心の中ではますます疑問符だらけになっていた。
部屋に案内された僕たちは素っ頓狂な声を上げた。
窓からは大阪の街が一望出来るし部屋の広さは何平米あるのかわからないけれどとにかく広くて豪華だった。
壁に掛けられたテレビも50インチはあると思われた。
「直ぐにお飲み物とご昼食をお持ち致します」と言ってドアを閉めた途端に僕らははしゃぐのを止められなかった。
「何だよ最高かよ!!!」
「すげー!ダブルベッドが3つもある」
「このバスルーム3人で入れそうやで、もちろん入らんけどな」
「ソファーでっかい!そしてふかふかや~!」
これならどこにも行かなくても充分満足出来る。
でもスイートルームって高いし予定では2泊のはず。
「追加料金とか請求されるんちゃうか?」ヒロトは不安そうに口にした。
その時にドアがノックをされて、開けると、ワゴンに乗せられた料理の数々とシェフらしき服装の人が入って来た。
広いテーブルに置かれたのはフランス料理のフルコースだった。
「ご歓談されるのにお邪魔でしょうから退出させていただきますが、お料理の追加やお飲み物などご希望でしたらご連絡頂きますと直ぐに参ります」
高級そうなワインをワインクーラーへ入れながらシェフは微笑んだ。
昼食にしては豪華すぎる料理に舌鼓を打つために僕らはしばらく無言になった。
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