春風ひとつ、想いを揺らして

新吉

第1話 春風みっつ、重いを減らして

 春風揺れる桜、とても綺麗。ほんとうは重たい花びらを減らしているのかもしれない。春風に揺れる杉、どこか怖い。やっぱり重たい花粉を飛ばしている。


 春風に揺れるあたしはなにを減らしてなにを飛ばしているのか。


 あたしはネガティヴで、なんでもマイナスに考える。春なんていいことはない。もちろん春夏秋冬。あたしの友だちにポジティブな人がいる。ここでは名前をポジ子さん、あたしはネガ子だ。



「ネガ子はいいね、楽しそうだよ」


「あたしのどこが楽しそうにみえるのよ」


「楽しそうにみえるよ、ネガ子の本読んでるとことか。あたし本読むとすぐ眠くなるもん」


「ああ」



 あたしの暗い趣味すらこんな風に表現できるポジ子。嫌味でも言われるのかと思った。あれ待って、「本読んで幸せになれるなんて、へー楽でいいわね」みたいなことかな。なんて話し終わってからしばらく考える。

 ポジ子は悪くない。あたしが変に曲がってくねってとらえるだけだ。他の誰もあたしを悪く言っていない。どこか影では言ってるのかもしれない。とそしてまたひとり落ち込んでいくだけだ。


 春なんていいことはない。新しい人なんて来なくていい。どうしてあたしは友だちと呼んでくれたポジ子と別れるのが辛いと素直に言えないんだろう。またあったらポジ子、あたしのこと忘れてそうだな。本当の友だちと楽しそうに笑っている、クラスの中心のような彼女。


 風は強くふいている

 桜が満開になって雪が降った

 綺麗だけど怖い


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