第六話 今年の演目
ドロップキックをかまされて数分後の事。ホワイトボードに黒のマジックで『今年の演目を決める』と書かれていた。同好会には、智一、音依、克樹、吹卯と琢磨と撫子で二年生は合計六人。そこに今日はいないが、入部した一年生が三人の合計九人で活動していた。
演目をするにも人数が原因で限られてしまう。取り敢えず、何の演目をしたいか聞いたところ、紅葉狩、滝夜叉姫、葛城山とあった。そこで一番現実的な葛城山が投票で決まった。
役割は後日に回すとして、今日は衣装や小道具、神楽面関係のことを片付けることにした。先に智一が、
「神楽面は琢磨がつくってくれるだろ」
琢磨は苦笑しながら、
「報酬が出るなら、まぁ、努力はしよう」
琢磨は本当の事を言えばしばらくは弟子である撫子に神楽面について教えるために仕事を受けてはいなかった。そのためあまり乗り気ではなかったのだが、
「その神楽面、私がつくっていですか?」
と、撫子が手を上げ発言していた。周りは少しざわつくが、琢磨が、
「こいつは俺の弟子だし、俺がちゃんと面倒見て使える神楽面をつくるから撫子に任せていいか?」
智一と克樹は「なら大丈夫かぁ」と言うが、音依と吹卯は「本当に大丈夫なのかな」と不安げだった。琢磨は、
「万が一まぁ絶対ないと思うが、もしできなかったらそのときはちゃんと別の物を用意しとくから安心してろ、それに撫子はやればできる子だから、師匠の俺が保証するから撫子に任せてくれねぇか」
と音依と吹卯に言って頭を下げた。
「そこまで言うのなら」と音依と吹卯は渋々了承してくれた。
次に、神楽衣装をどうするかと議題に上がった。前まで借りていた神楽団が今年は忙しいためあまり借せないことを知らされていたためどうするかで悩んでいた。
買うにも数十万は絶対かかるために購入はできない。
琢磨は不意に浮かんだことを口に出した。
「だったらつくればいいんじゃないか?」
と。周りは、「アホかお前は!」とつっこまれたがそれ以外に用意することはできない。他の神楽団から借りればいいんじゃないのかと思うが、それは難しく、所属したことがある神楽団で信用があるからこそ借りれていたのだ。
どうするかとみな頭を抱えていた時に撫子が、
「琴さんに頼むのはどうですか?」
と言った。みなはう~んと悩んだ。さっき神楽衣装をつくっていたことを知っている琢磨はみなに伝えて、琢磨が興奮するとはそれほど凄かったのだろうとは雰囲気でわかってはいたが、いざ頼むとしても性格を知っている以上無理だろうと思っていた。
周りが琢磨の方を見る。そして、
「今こそ部長の頑張りどころですよ」
と音依。克樹が、
「頑張ってこい部長」
と。「頑張れよ!」と智一。「頑張ってください!」と吹卯。
撫子もそれにのって、
「師匠の威厳を見せてください!」
と言ってきた。琢磨は、
「普段は言わんくせに、面倒事の時は部長部長言いやがって……部長が途轍もないYESマンで良かったな!」
琢磨はYESマンなのである。琢磨は、琴がいるである手芸部に行く。丁度手芸部の部室を出てきた時だった。琢磨が、
「あの、ちょっと話がって」
と話しかける。琴は無言だった。そしてなぜか睨まれている。琢磨は、
「神楽衣装をつくって「ごめんさいそれは無理」
と遮られた。琴は、「それじゃあね」と言って、帰って行った。琢磨は、断られてが、「それじゃあね」と言われたことで、チャンスはあるのではないかと思った。
琢磨はしつこい男であったのだった。
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