第十話 ゼロから始める弟子との生活
琢磨の目の前には撫子の住む鳴子さんの家の前にいた。
高鳴る心臓を抑えつつ、ピンポーンとインターホンを押した。
すると、
「できたのか?」
鳴子さんの声が聞こえる。
「はい」
琢磨は静かに答えた。
「琢磨、少し笑っていいか」
「え、なんで」
すると、鳴子さんが笑いながら玄関を開けてくれた。
「薔薇百本って告白かよ」
そのとき琢磨はドキッとした。やべぇ、思わず花を買うべきだと、店員さんにお勧めされた薔薇百本を買ったのだが、まさか告白とは……。いや、別にいいか。
撫子がロングからショートカットになっており、自分の好みにどんぴしゃだった。
「師匠……うふっ」
撫子も笑っていた。琢磨はふーっと深呼吸をして、
「この前は本当にごめんさい。自分が無力に関わらず、撫子のせいにして全部撫子に擦り付けてた。もう一度やり直したい。撫子、もう一度弟子になってくれ!」
「私は琢磨さんのところ以外で神楽面を教わるつもりはさらさらないですよ。……お願いします」
琢磨が差し出した手を撫子が握り、それを見た鳴子さんが笑い転げた。
「お前ら、それは告白と言うちゃうか!?」
琢磨と撫子の頬は赤くなっていた。琢磨は、
「俺は集中すると周りが見えなくなる人間で、怒りっぽい人間で、たまに甘えたくなってしまう人間ですが、どうか俺と付き合ってください!」
次は薔薇を差し出す。撫子は、
「お願いします」
と言ってくれた。鳴子さんは、
「たまに甘えたくなるって、琢磨はそんなやつだったけ!?」
と言いながらも笑っていた。
琢磨はたまに猫とかのぬいぐるみに抱き着いて話しかけている時がある。
・・・
6月1日。琢磨の神楽工房では撫子と二人仲良く神楽面を創作する声が聞こえるのだった。
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