第90話 赤い絨毯踏みしめて

「どうやって!?」

「もちろん正々堂々と国会の場で」

「だって、あたし達中学生だよ」

「私達は、ただ証人として出るだけ。実際にやるのはお父様よ」

「星野さんのお父様って?」

「この事は学校では黙っていてね。私のお父様は政友党の幹事長で衆議院議員の星野ほしの郷造ごうぞう

「ええ!?」

「名前ぐらいは知ってるでしょ」


 そりゃあ、知ってるなんてもんじゃない。


 色々と悪い話も……


 あ!! もしかして、真君のお母さんが会いに行った人ってこの人では……


 だとすると、奥さんに追い返されたのは、リアルの毛をいっぱいつけてきたからね。


「政治家だからね、悪い事もやってるのよ。そんな人の娘だから、嫌がらせもされたわ。そのせいで一年前に転校する事になったの」

「星野さん」

「今の学校ではこの事は誰にも言えないでいたの。話したのは、あなたが初めてよ」

「いいの? あたしにそんな事打ち明けて?」

「リアルちゃんの秘密を守り通したあなただから、信頼できると思って打ち明けたの」


 ただの変人と思っていたけど、この人にそんな過去があったなんて……


「それとも、政治家に利用されるのは嫌かしら?」

「え? そんな事、考えてもいなかったわ」

「そう。でも、もしそういう思いが少しでもあるなら、こう考えてくれないかな。政治家に利用されてるんじゃない。政治家を理由してるんだって」 

「うん。でも、ギブ&テイクと思えばいいんじゃない?」

「そうね。私達はリアルちゃんを守れて、お父様は政敵を倒せる。ギブ&テイクね」


 やがてヘリコプターはヘリポートに降りた。


「さあ、行きましょう。美樹本さん」

「うん」


 あたしはリアルを抱いて赤い絨毯を踏みしめた。

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