第71話 「なんでリアルと名付けたんですか?」
(瑠璃華視点)
「なんでリアルと名付けたんですか?」
長々と続いていた博士の話にあたしは口を挟んだ。
「それはね」
博士はハミルトンに一瞬目を向けた。
「ひ・み・つ」
「ええ!? どうして」
「ごめんなさいね。リアルという名前は息子に由来しているの。ここで由来を話したら、私の素性を彼らに知られる恐れがあるのよ」
「でも、あたしに話しても……」
そう言いかけて、あたしは振り返る。
ハミルトンが慌てて視線を逸らした。
そうか、こいつに聞かれてたんだ。
「クローンはあきらめて、リアルを息子と思って手元に置こうかとも考えたわ」
「なぜ、そうしなかったんですか?」
「その矢先にあいつらが科研に乗り込んできたのよ」
「あいつら?」
「国会議員の
「処分って? だってリアル達は生きているんですよ。お金がないからって殺すの?」
「残念だけど、あの人達は動物の命なんかよりお金が大事なのよ」
「そんな」
「仕方なく、私は元彼に相談に行ったの」
「元彼?」
「私が生涯でたった一人だけ愛した男性。今にして思えば、なんであんなクズ男好きになったのかわからないけど……」
「クズ男なんですか?」
「そりゃあもう。顔は俳優並にいいんだけど、女にだらしなくて、あっちこっちに愛人を作っていて……」
「でも、なんでそんな男に相談したんです?」
「彼ならなんとかしてくれると思ったのよ。なんたって日本の諜報機関のトップだから。そして、何より彼がリアルの父親だから」
諜報機関? それって、まさか?
「内調ですか?」
「あら? よく知ってるわね。そうよ。彼は内閣情報調査室室長の
ガッタン!!
あたしは盛大にこけた。
それって、糸魚川君のお父さんじゃないの。
なるほど、そういう事か。
養成所の生徒達に禁欲主義を強いていたのは、要するに自分が女で散々失敗したから。……あれ? ということは、リアルと糸魚川君は、腹違いの兄弟?
「どうしたの? 大丈夫?」
博士が差し伸べてくれた手に掴まりあたしは立ち上がった。
「だ……大丈夫です」
「そう」
そして博士は話を続けた。リアルを連れて、元彼のところへ会いに行ったところから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます