第46話 サイクリング

 リアルをリュックに入れて背負い、あたしは土手の上のサイクリングロードを自転車でひた走っていた。

 切り裂くような冷たい空気が頬を過ぎっていく。

 でも、心地よい。

 あたしは最近まで自転車に乗れなかった。


『いいもん、自転車なんか乗れなくたって、走ればいいんだから』と思っていたけど、それってブドウが 酸っぱいと決めつけていたキツネと同じね。

 こんな楽しいなら、もっと早く練習すればよかったな。

 リュックからリアルが這いだしてきた。


「これが多摩川? なんか狭くない」


 あたしは川の方に目を向けた。

 河原では釣り人が竿を垂らし、その先の川面では水鳥達が優雅に泳いでいる。


「多摩川じゃないよ。これは浅川」


 名前に違わず川底が浅いから『浅川』というのか知らないけど、高尾山を水源としている一級河川。この先で多摩川と合流している。 

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