第37話 本当はあたしがやった……とは口が裂けても言えない。

「ち……違うのよ。別にそういうつもりはないんだから。変な誤解しないでね」

「え? なにが……」


 ああ!! これじゃあ、まるでツンデレキャラじゃない。

 第一、あたしは別に糸魚川君を好きなわけじゃないし……


「あの……美樹本さん。もうホームルーム始まるけど……教室に戻らないと」

「だから、今戻ったら危険なのよ」

「なんで?」


 あたしはかいつまんで経緯を説明した。


「学校裏サイト? そこに石動君の悪事が」

「そう。それを糸魚川君がやったと疑っているのよ」

「でも、僕はやってないし」


 わかってるわよ。本当はあたしがやった……とは口が裂けても言えない。


「でも、石動は糸魚川君がやったと信じ込んでるの。教室にいったらリンチされるわ」

「だけど、僕はやってないから、話せばわかってもらえるって」

「話してわかる奴じゃないから、こういう事してるんじゃない!! 君は石動の事を何にも知らないのよ」

「どういう人なの?」

「簡単に言うと、強き者を助け弱きをイジメル無敵の男」

「あの……美樹本さん。それ逆じゃ……普通『弱き者を助け強きを挫く』じゃ……」

「だからあ、スーパーマンとは真逆の奴だって事。先生とか上級生とか柔道部員の前ではいつもヘコヘコ媚びて、下級生とか女の子相手にはいつも威張っている」

「そういう人だったんだ」

「君だって、転校してからずっとあいつにイジメられてるでしょ」

「え?」

「言いたくないのはわかるわ。でも、転校初日に制服が汚れていたのは、あいつにボコられたからでしょ」

「え? まあ……」

「昨日だってパシリやらされたんでしょ」

「なんで知ってるの?」

「それはリア……じゃなくて、学校裏サイトの映像に出ていたから」

「そうなんだ。でも、それってイジメなの?」

「イジメに決まってるでしょ」

「いや、前の学校だと、イジメってこんなナマヌルいものじゃなかったから」

「え? ナマヌルい? 今まで、どんな学校にいたの?」

「中野……あ、いや……その」

「中野? 中野区の学校?」

「ああ!! そうそう、中野にある学校なんだ」

「中野にそんな怖い学校があるの?」

「そりゃあもう」


 どんな学校だったんだろ? 

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