第20話 昼休みの教室

 などという心配はまったく無かった。


「それでね、この前、お父様と新宿に行ったときにキャリコに連れてってもらえたのよ」


 昼休みの教室。

 給食を食べ終わったら、頃合いを見計らって話しかけようなんて思っていたら星野さんの方から、給食を持ってあたしの机にやってきた。


「そこの猫達がもう可愛くて」


 ただ、マシンガンのように語る彼女に話を切り出すタイミングが掴めない。


「キャリコってなに?」


 あたしの横で給食を食べていた、なっちゃん……安藤あんどう夏美なつみがきょとんとした顔で聞く。


「猫カフェよ。もう、中はパラダイスだわ」


「へぇ、行ってみたいな」


 やっと話しかけるチャンス。


「星野さん。お父さんはアレルギーないの?」

「ええ。アレルギーがあるのはママと弟だけ」


 ん? 机の下から紙片を持った星野さんの手が……

 なんだろう?


『昨日のこと、誰にも話してないわね?』


 と紙に書いてあった。

 そうかそうか。昨日の事を話していないか、確認に来たのね。

 だけど、隣になっちゃんがいるから、迂闊に声に出せなかったわけだ。

 あたしは無言でうなずく。

 すると星野さんは二枚目の紙を出す。


『他言無用よ。お願い』


 もちろん、あたしはあんな事を人に話す気はない。

 まあ、それはともかく、話を切り出すいいタイミングだ。

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