リアルデスゲーム
青崎 悠詩
リアルデスゲーム
‘‘リアルデスゲームへようこそ‘‘
2020年8月15日。高校一年のミツルはスマホを持ったまま固まっていた。
仕掛け人Xという文字と共に謎のURLがDMに届いた。なんかのエロサイトにでも繋がるか?と密かな期待を寄せながらクリックしてみた。しかし、何も起こらない。読み込むことも無くただDMの画面が表示されているだけだ。
「ただのいたずらメールか」と軽い気持ちでスマホを閉じ、ポケットに入れた。
ミツルのズボンのポケットに一つの明かりが灯る。先ほど閉じたはずのスマホが勝手に起動したのだ。そして画面に冒頭の文字が現れる。
しばらくしてスマホを取り出したミツルは不可解な現象にしばらく動けずにいた。ミツルの頭は次に取るべき行動を必死で探っている。
出した結論は強制シャットダウン。深入りはせず電源を落とせば何とかなるだろうという安易な考えだった。手を震わせながらスマホの電源を落とす。
電源はたしかに落ちた。しかし、落ちて数十秒経つと自動的に電源が入り、やはり冒頭の文字が表示される。
原因はおそらくさっきのURLだ。URLをクリックしたことでスマホにウイルスが流れ込んでしまったのだ。何てことだ。高校の入学祝に買ってもらったスマホが4か月でダメになってしまった。親になんと説明しようかと思考を巡らせてみるがリアルデスゲームが気になって頭が回らない。
最近、ずっとやりこんできたゲームをコンプリートして退屈していたところだ。クリアすれば、ウイルスも消滅するかもしれない。それにどうせこのスマホは処分になる。だったらこの先どうなるか、見てみるのも面白い。
またしても安易な考えで画面をタップした。すると画面には
‘‘キャラクターの名前を入力してね‘‘
と表示される。俺は自分の名前をローマ字にした時の頭文字「MTR」と入力する。
‘‘そんな名前の人は知りません‘‘
リアルデスゲームは拒否した。今までゲームに名前を拒否されたのは初めてだ。それに知らないってどういうことだ?
しばらく俺は入力を繰り返した。そして最終手段だと危険な賭けに出る。
「ツグナガ ミツル」俺のフルネームだった。震えながら入力を始める。
‘‘認識しました。あなたはツグナガ ミツル‘‘
どの名前も拒否し続けたリアルデスゲームが自分の本名だけ認識したのである。俺は鳥肌が治まらなくなった。
‘‘いってらっしゃい‘‘
ポップな効果音と共にゲームらしきものが始まった。一見すると普通のRPGだ。しかし異様だったのはマップがうちの近所にそっくりだったこと。たしかにスマホには通販の時に利用する住所が保存してある。それすらも盗んだというのか。
‘‘お家に帰ろう‘‘
画面にミッションらしきものが表示される。しかしスマホをタップしても何も動かない。もしかして、と思い俺は少しだけ進んでみた。するとキャラも少しだけ進んだ。「リンク…している…。」
‘‘あと、30分ほどだね‘‘
その文字が表示されたとき、俺は自分の通っている高校の前にいた。よく考えてみたら高校から家までは大体、30分くらいだ。驚異のリンク率。恐怖を感じながらも俺は続きが気になっていた。家に着くとどうなるのだろう。いつしかウイルスだということは忘れて普通にゲームを楽しんでいた。
‘‘ゲームオーバー‘‘
突然、ゲームが終わった。理由はよくわからない。クリアしたわけではない。画面をタップすると見慣れたホーム画面が表示される。「なんだ、もう終わりかよ。」俺はスマホをポケットに入れて再び進み始めた。
キーッッッッッ!!!!
次のニュースです。今日○○町の横断歩道で死亡事故がありました。亡くなったのは××町に住む15歳 嗣永 満さん。自転車で横断歩道を渡っている際にトラックと衝突したということです。警察によりますと、嗣永さんはスマホを触りながら自転車を運転しており赤信号に気づかず突っ込んだ可能性が高いとのことです。トラックの運転手にケガはありませんでした。
リアルデスゲーム 青崎 悠詩 @lily_drop
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます