第7話

 須藤の手腕で中学生になった幸子は再びぽつぽつとテレビに出始めた。

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 母は卑屈なほど須藤に頭を下げた。

「止めてください、由紀子さん。幸子ちゃんの頑張りですよ」

 須藤の言う通りだった。

 幸子は自分で仕事をとっていた。何人ものプロデューサーやディレクターに体を開きながら。

「だめだよ、こんなこと」

 何言ってんの、ホテルまで連れてきて。

 幸子はしらける。心折れそうになりながら、これも仕事だと続けた。

 いくじのない男は、幸子が寄せた体を遠ざける。幸子の細い両肩に手を置いて。

 男は視線をそらし、うつむいたままだ。

 でも、部屋を出ていったりはしない。何かを待っているのだ。

 若いディレクターの中には、こんなふうに土壇場になって幸子をいったんは拒否するものも多かった。

 いいわけがほしいのか。したくないフリをするのだ。

 しかし、幸子を盗み見るその視線はねっとりと濡れている。

 そして、幸子の短いスカートから伸びた足を、ふくらみはじめた胸を暗くじーっと見つめているのだ。

 テレビの国でキャスティングの権利を握る大人たちは高学歴のものが少なくなかった。若い彼らは案外「普通の女性経験」は乏しかったのかもしれない。幸子との経験も、とても普通のものとは言えないが。

 幸子は再び男に身を寄せ、自分よりもずっと大きな手を取り上げる。

 緊張しているのか、手の先が冷たい。

 男の肌は自分のそれよりずっと熱いものなのに・・・学習してきた幸子は不思議に思う。

 この男の胸も、この手先のように冷えているのだろうか。

 幸子は確かめたくなる。

 幸子はまずはその手を自分の胸にあてがう。男の手のひらは次第に動きだし、熱を発しはじめる。

 こうなれば簡単だ。

 幸子は、男の最も熱くなっているであろう部分に触れる。

「あっ」

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