第14話 尋問
「それじゃあ先輩、また昼休み会いましょう!」
「いや、昼は友達と食べろよ……」」
「え、でも先輩寂しくないですか?友達いないから昼ご飯一人なんでしょう?」
「……否定はしない。でも、余計なお世話だ」
「も~強がっちゃって~」
そう言って陽菜は俺の脇腹をぐりぐりとしてくる。地味に痛いからやめてほしいのだが。
「ま、そういうことで昼は先輩のこと迎えに行くので、覚悟しておいてください!」
「はぁ………わーったよ。でも、別に友達優先させてもいいからな?」
「まだ言いますか……。私は先輩と食べたいんです!浮気はしません!」
浮気て……。
まあ、「先輩と食べたい」って言ってくれるとちょっと照れるな。
「……はいはい、分かったからそんなに興奮するんじゃない。また注目浴びちゃってるから」
俺達の周りには昨日程まではいかないがそこそこの人数が集まっていた。
男子からはものすごい目力で今にも殺されそうな圧力を感じ、女子は周囲とひそひそ会話し、時折こちらを指さしている。
「あちゃー、またやらかしましたね……。この辺でお開きとしましょう」
「そうだな。じゃあな、陽菜」
「また後でです、先輩」
俺は陽菜の教室である一年D組も前から移動し、自分のクラスへ向かった。
正直クラスに行くまでに誰かに絡まれるのではと思っていたのだが、結局誰にも絡まれることはなかった。……教室に着くまでは。
教室に入ると、俺は何故か違和感を感じた。何というか、空気が重い。何かあったのだろうか?
思わず周りを見渡すと……
「ひぃっ!」
俺は思わず後ずさった。
なぜなら周囲から先程とは比較できないほどの殺意の混じった視線が俺を突き刺していたからだ。
なんで!さっきはそんなに圧力無かったのに!こんなことなら陽菜と離れなければよかった……。
俺はその視線の中、そろりそろりと自分の席に座った。
えーっと、最初の授業は……
「やあ、えーっと……」
「……水﨑だ」
「水﨑君。オッケー覚えた」
そこに爽やか系のイケメンが現れた。ついでに他の男子大勢も。
ってか、話しかける相手の名前くらい知っとけよ。名前知られてないの傷つくんだよ!後輩にも「ぼっち先輩」って呼ばれてたし。
「……それで水﨑君。君は南さんの何なのかな?」
いやそれこっちのセリフ。なんでそんなん言う必要あるんだよ。何様だよ。
だが、友達のいない俺にはそんなことが言えるはずがない。めっちゃ言いたいけど!ついでに言えばイケメン嫌いだからその近づけてくる顔殴りたい。
それにしても、俺と陽菜ってどういう関係なんだろうな。
流石に同居人って言うわけにはいかないし……友達ってのも「距離が近すぎる」とか言われるだろうし。……だから人と関わるのは嫌なんだよ……。陽菜の提案には乗るべきではなかったか……いや、本欲しいから乗ってよかったとは思うけどね。
俺がどう答えるべきか迷っていると、急に後ろ側のドアが勢いよく開けられた。
「先輩!私達ってどういう関係なんでしょう!」
……陽菜、タイミング悪い。
これじゃあなんか深い関係みたいじゃん。それをこのイケメン達が俺を囲んでいる状況で……
「水﨑君?どういうことなのかな?」
うわ、怖い。表情は笑ってるのに目が笑ってないと、こんなにも怖くなるのか……。
どう答えよう。
友達以上恋人未満?なんかそれは違う気がする。
一個違いの幼馴染?距離感的にはちょうどいいけど、嘘がばれたらなんかめちゃくちゃヤバそう。
もういっそ恋人とか言っちゃう?……流石にそれは陽菜に申し訳ないし、そんなことを言える勇気をそもそも持っていない。
どうしよう……
その時俺は妙案を思いついた。
俺達の関係を表す最適の言葉があったじゃないか。
『同棲ノ掟 其の六』
同棲している間は――
「俺達は、家族だ」
「「「は?」」」
「え、家族?」
「兄妹ってこと?」
「でも苗字違うぞ」
「親が離婚したとか?」
「にしても『お兄ちゃん』とかじゃなくて『先輩』って呼ぶのはおかしいだろ」
「え、じゃあまさか結婚してるとか?」
「それはない。十八まで男は結婚できないぞ」
「なんだって!じゃあ俺はまだ由美子と……」
「お前のことは今どうでもいい、バカップル代表」
「ってことは親公認の仲ってこと?」
「んならもう付き合ってるのか?」
「そりゃそうだろ。あの距離感は恋人のそれ」
「「「マジかー!」」」
「え、な、何言ってるんですか先輩!」
……俺変なこと言った?
掟通りのこと言っただけなのに……。
しかもそれ陽菜が「絶対に入れてほしい」って言ったやつだよ?なのになんで引いてるの……。
この騒ぎは教室に先生が入ってくるまで続いた。
ちなみにその間俺は陽菜にポカスカやられていた。今までで一番痛かったな……。
☆あとがき
面白かったと思った方は是非、星やハートをお願いします!
感想を頂けるとなお嬉しいです。
※新連載『たとえハーレムな状況であろうとも、俺は貴女に好きと伝えたい。』始めました。
そちらも読んでもらえるとありがたいです。
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