揮発する夜
時折、夜が銀河に還る時がある。
月が欠けていて、
星がまばらで、
いやに空気が澄んでいる午前2時。
そんな時、夜は揮発して旋律となる。
夜更しの街から見上げると、原音の夜がよく見える。
そのか細い響きはオゾン層の円環を巡り、
やがて月の海を泳ぐ鯨の唄となって、
宇宙へと溶けていく。
夜が優しすぎる日は、眠れないから外に出る。
そして微細な粒子となった夜を、胸いっぱいに吸い込む。
凍った暗闇の匂いが、幽霊のような肉体に染み渡る。
銀河へと向かう夜を取り込むたび、
身体の輪郭が、点滅する街灯へと溶け込むふしぎ。
ああこの時間は、喧騒の寂しさから最も遠い。
道に迷ったから、夜更しをしている。
忘れ去られた自販機がゴウンゴウンと泣いている。
標識と視線が絡まり、夜空に向かって目をそらす。
そうしたら、そこにある。
伸ばした指先には、触れている。
夜が螺旋を描いて 欠けた月に舞い踊る
旋律で作る望遠鏡で銀河を覗く
空気力学の身体から
銀河を漂う幽霊がスルリと抜けて
空へ 空へ 空へ
空の終わりへ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます