【同級生の身体を1万円で買う救われない話】

島風

第1話 彼女を初めて買った時

俺と斯波が仲良くなったのは共通の趣味、ポケットジョークが原因だった


 斯波は同じクラスのあまり目立たない女子だった


 たまたま、席が隣同士になって、少し話す位の間柄だったが、ある日、彼女が読んでいた本で、俺達の関係が変わった


「それ、ポケットジョーク集じゃないのか?」


俺は斯波に声をかけた


 斯波は振り向いた


 容姿はあまりパッとしない、もっとも化粧っ気のない斯波を他の化粧をしてる娘と比べるのも酷な気もした


「そうだよ。知ってるの?」


「うん、俺の愛読書」


「本当?」


これが俺と斯波のつき合いの始まりだった。そう、全ての始まりだった


 斯波は化粧をすると、とても綺麗になる。俺だけが知っている秘密だ


 斯波が本当は綺麗な事を知っている理由......


 それは、俺が彼女を毎週1万円で彼女の身体を買っているからだ


 週に一度、俺の家で俺と彼女は密会していた。その時、彼女は目一杯着飾ってくる


 もちろんお化粧もしっかりしてくる


 いつものボサボサの髪、長めの学生服のスカート、斯波は野暮ったい女の子だ


 でも、週に一度だけ、特別な斯波がみれる


 俺はとても辛かった。彼女が身体を売らなくてはならない理由......


 それは貧乏だ。彼女のお父さんが失業したそうだ。今はお母さんのバイトだけで食いつないでいる


 斯波は家の為に身体を売っている。俺は彼女を買った。その時だけは他の男に抱かれないで済むから


 斯波、俺の初恋の人......


 ☆☆☆


あれは俺が大好きな斉藤和義の最新CDを渋谷のタワーレコードに買いに行った時だ


俺は目当ての初版のCDを手に入れてご機嫌だったせいか、普段と違って、渋谷の街をブラブラした


しばらくセンター街をウロウロしたが


「さっぱり道がわからん」


俺は一人呟いた。なにぶん、陰キャな俺は友達が少ない、渋谷で遊んだ経験はほとんどない


「東京在住なのに。google先生のお世話になるのか......」


俺はスマホで駅への帰り道を探した。


「いけね、かえってまずいとこ来た」


それはエッチな事をするところだ。地味な高校生の俺にでもわかる。こんな所、気まずい


俺は慌てて踵を返すと、道を降って行って、道の角を曲がった


そして、信じられない人に会った


「た、高野」


彼女は俺の名前を言った。それは彼女が紛れもなく、斯波だという事を意味していた


「し、斯波......」


斯波は化粧をしていた。お洒落な服も......


そして隣には大人の男が立っていた


「お、お前何をや.....」


俺は言葉を最後まで続けられなかった。何をやっているか、そんなの答えは一つだった


 俺は怒り狂った。彼女の隣の男にいきなり殴りかかった


『ごす』


俺は情けない事に男に簡単に腹に一発入れられた


「げふ」


「止めて、知ってる子なの」


「ふん、なんだせっかくのところなのに」


男はかなり不満そうだ。俺は行き所のない怒りを、頭脳に注ぎ込んだ


 高校生がこんな所に入って言い訳がない、そういった事をするのももちろんそうだ


「お前、斯波が高校生だって知ってるのか?」


ビンゴだった。男は驚いた顔をした


「お前、勘弁してくれよ。流石に子供は抱けないぜ」


男はさっさっとその場を去って行った


 上手く、いった


「大丈夫か?


 斯波?」


俺は斯波に声をかけた。あたかも彼女を助けた彼氏の様な感じで.....


 しかし、俺と斯波はそんな関係じゃなかった。それに、斯波は自分の意思で......そんな事を......


「なんて事するのよ」


斯波はつかつかと俺に近づき、俺の頬を張り倒した


「痛いよ、何すんだよ。俺、助けたのに」


「何が助けたよ。この営業妨害」


営業妨害?


 斯波はそういう事する娘だったのか?


 斯波は俺の初恋の女の子なんだぞ


「高野、責任取りなさい」


「せ、責任って?」


「あなた今、いくら持ってるの?」


「えっ?」


俺は斯波の勢いに圧されて、あっさり財布の中を出してしまった


 俺の財布の中に諭吉先生が見えると、斯波はさっと諭吉先生を抜いた


「行くわよ」


俺は斯波に手を引かれて、あっさり、ホテルに連れ込まれた


 俺は茫然自失だった。初恋の人が売春してたんだぜ。誰だって、そうなる


 斯波は慣れた感じでホテルのフロントをやり取りすると、サッサとエレベーターに乗り込んだ


 そして、一室に入る


「斯波、お前、こんな事してるのか?」


「いけない?


 貧乏人が身体売ってお金をもらったらいけない?


 あなたにそんな事を言う権利あるの?


 あなたは裕福なんでしょ?


 私と違って」


俺は返す言葉がなかった。俺は決して裕福なんかじゃない。お父さんは派遣社員だし、お母さんもだ


 そんな俺より斯波は貧乏だった。持ち物や、時々お弁当がない時があった


 でも、俺は必死に抵抗した


「一時は良くても、絶対斯波の為にならない、どんな事があっても絶対そんな事しちゃ駄目だ」


斯波は下を向いた。彼女の目の睫毛がその瞳を隠してしまう


 斯波はこんなに綺麗な子だったんだ。俺は不謹慎にもそんな事を思った


「そんなの金持ちの強者の理屈よ、私達の事なんてわからないわよ」


「駄目だよ。お願いだから止めて」


「じゃ、こういうのはどう?


 あなたが私を買って、何してもいいわよ」


「そ、そんな......」


初恋の人、彼女を自分のものにしたいという気持ちはある


 でも、お金でなんて、絶対嫌だ


「もう、1万円もらってるから、いいのよ」


俺は、中の下の成績の頭脳を必死に酷使した。どうすればいいのか?


「何をしてもいいんだな?」


「ええ、いいわよ。どうせ男のしたい事なんて一つなんだろうけど」


かかった。俺は彼女を買う決意をした。俺が買っている間は彼女は他の男のものにならないから


「じゃ、俺の足の裏の匂いを嗅いでくれ」


「......」


斯波は突然沈黙した。ちょっと引かれたかな


「俺の趣味なんだ。なんでもいいんだろ?」


「え、ええ、確かにそうだけど」


「じゃ、早く」


斯波はしばらくポカンとしていたが、大人しく俺の足の裏の匂いを嗅いだ


「うぇー、この変態!」


斯波に罵倒されたが、俺は無事、この日を乗り切った

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