第7話
とりあえず男性はインターホンを鳴らした。やはり何度鳴らしても返事はない。
彼が困ったようだったので、琴美は聞いでみた。
「中身は何?もし良ければ私が替わりに買い取るけど」
彼は一瞬嬉しそうな顔をしたが、一応本人に渡す決まりだと答えた。
それならば、私はこの家の知り合いだから会社に聞いてみてもらって、良ければ私が頂くのはどうかしらと案を出した。
早速彼は会社に電話を掛け、了解を得たようだった。
「大丈夫みたいです。
ただ、念の為お名前と電話番号を教えていただけますか?」
「わかったわ」
琴美は連絡先を教えお金を払って荷物を受け取った。
男性が自転車で去った後、中身をチラッと見た。
ハンバーガーが3つ入っているのが見えた。
(3つ?)
琴美は驚いた。
隣の女性が興味深げに荷物を見つめていたので、
「ハンバーガーみたいですよ。丁度私お腹が空いていたので助かりました。」
琴美は慌てて話すと、再度頭を下げて立ち去った。
自宅に帰るまで荷物は手につけず、部屋に入った彼女はこの事を父に連絡した。
その後机の上に荷物の中身を全て出した。
ハンバーガー3つ、ポテトが2つにサラダが1つ、ホットコーヒー2つにオレンジジュース1つが入っていた。
(セットメニュー3つ)
あの家は母子家庭で2人暮らしのはず。
まして男性からの電話って一体どういう事?
萌ちゃんなら何か知っているのかしら?
その時、琴美の携帯が鳴った。
父からだった。
「さっきの話は本当なのかい?男性からの注文って」
電話をした時に父は急いでいるようだったので、単刀直入に話をしただけだった。
そして父親の話では未だ母親は帰って来ていないという。
琴美は何か嫌な予感がして仕方がなかった。
「お父さん、今から萌ちゃんに会いに行ったら駄目かしら」
琴美は聞いてみた。
「萌ちゃんって、娘さんの事かい?
警察の方でも聞き込みはしていると思うんだが。それにお前はあんまり首を突っ込まない方がいい」
健二は心配しながら答えた。
「私何か嫌な予感がするの。昔から私の予感は当たっていたでしょう?」
電話の向こうで考えている健二の様子が分かった。
「お父さん、お願い。」
琴美の言葉に押されて、健二は萌がいる場所を教えた。
「くれぐれも無理はするんじゃないよ。施設へは私の方から連絡を入れておくから」
彼女は父に礼を言うと、早速出かける用意をした。
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