悪魔のお姫様~深紅の翼~

@ruminare

第1話 夢見るお姫様

✧第1章 王宮内


デビルズキングダム。

大きな孤島の真ん中にそびえ立つ巨城。

しかしその広さは虚しささえ感じる。

城の中には私と父上と母上、そして側近のツルギーナしか居ないのだ。四人の空間にしてはあまりにも広すぎる。


前に母上にその事を訊いたことがある。どうやら昔は活気に溢れていたらしい。

侍徒は何人もいて夜になっても宴が続いていたらしい。

だが今はそんな羽目を外す声など、聞こえてこないのだけれど。

しかし、事件が起きたらしい。侍徒の一人が王を殺そうと暴動を起こした。目的は簡単。王族たちを殺し自分の王国を築こうとしたわけだ。

当時赤ん坊であった私も傷付けられたらしい。

今でも腕に、まだ傷が残っている。

それから優しい父は誰も信じられなくなり、侍徒を全員追い出し、残したのは妻、娘、そして娘の親友であり側近、ツルギーナのみだ。

しかし彼女も珍しいものだ。

確か200年前だったか。この事件とは別の「あの事件」があって人間を拒み続けた父が人間であるツルギーナを信用するだなんて。まああの子はとっても素直で私と仲がいいから、なのかな?

でも一応悪さしたら殺されてしまう約束を取り付けられてるが。

ああ。

そんな理由があるにしろここは退屈だ。

父上、母上からは外に出てはならないと言われている。危険な目にあってはならないと。

軽く軟禁状態だ。

でも退屈だ。退屈すぎる...!

私は決心した。皆が寝ている午前2時、ここを抜け出して外に出る!

外の世界を見て回ったらすぐにベッドイン!これでOKなはず。

窓から見える外の世界は一面に広がる町。城下町と言うのだろうか。

商人たちがあくせく歩いて周り、客を呼ぶ声がこっちまで聞こえてくる。町は活気に溢れていて楽しそうだ。

でも外はここだけではないはず。城の周りはどうなっているのか。

好奇心が私の心をくすぶる。

幸い私は悪魔族。そして有翼族。羽を使って風を受けて外を回ればすぐに帰って来れるだろう。

私は期待に胸を踊らせていた。実行まであと12時間。

それまではツルギーナと遊んでいよう。

ああ。楽しみだ。

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